ハウス内を自動で防除する!丸山製作所の農薬噴霧ロボット「スマートシャトル」に迫る
2024/07/01
慢性的な人手不足に悩まされている施設園芸生産者に朗報!丸山製作所が開発している自動走行型農薬噴霧ロボット「スマートシャトル」は圧倒的な省力化・省人化を実現してくれる。
飛躍的な省人化・省力化
防除方法の改善へ
一言でハウス内防除といっても、規模により方法は様々だ。小さなハウスでは、背負い動噴で薬剤を散布している人が多いはず。大規模ハウスでは、ラジコン動噴やセット動噴、細霧ノズルを使っている方もいるはずだ。これらの防除方法には一長一短があり、いずれにも課題がある。教えてくれたのは、丸山製作所営業推進課の小川泰弘さん。
「背負動噴やラジコン動噴、セット動噴による散布は、確実な防除ができるものの、どうしても人手が必要となります。施設園芸は労働集約的に行うものですが、日本農業は人手不足に悩まされており、省人化・省力化が求められています。
細霧ノズルによる約債散布は、省力化・省人化という面では効果がありますが、施設内で設置可能な場所が限定されるため、栽培作物が変わることで適用できないケースもあります。また、細霧ノズルでは多くが上から散布することになるため葉裏などへの必要な個所へ農薬が付着しないことを懸念し、結果的に散布量が増えてしまう場合もあります」
そこで丸山製作所では「シャトルスプレーカ」を販売している。電動の散布用車両と呼べるもので、同社製の動力噴霧機&タンクと接続して使うことで、畝間などを走行して薬剤を散布できる。また、作業者の薬剤被曝を避けることができる、というのも大きなメリットだ。
防除作業を75%削減
畝から畝へ自動走行!
「シャトルスプレーカ」が持つメリットを継承しつつ、新たな機能=自動走行を与えられたのが、今回丸山製作所が開発した「スマートシャトル」だ。
「発売中の『シャトルスプレーカ』は畝から畝へ自動で移動はできません。ですから、『シャトルスプレーカ』が畝間を走行して散布している間、作業者は他の作業などをしながら待機して、タイミングを見計らって次の畝へ人力で運ぶ必要がありました。
『スマートシャトル』はGPSを使っていない、というのも大きな特徴です。そのためハウス内でも使用可能です。畝に二次元コードを設置して、それをカメラで認識しながら自動走行します。畝の中央を走り続けるために、ライダーセンサーも使っています。
畝から畝へと自動で移動できますから、人が待機して、持ち運ぶ必要はありません。また、遠隔操作とモニタリングが可能なのも『スマートシャトル』の特徴です。基本的には、人がいなくても防除が完結するようになりました。何かあったときはモバイル端末等にアラート入る仕組みも搭載しました」(小川さん)
自動で防除させることから、安全装置としてバンパースイッチによる障害物検知機能を搭載した。
『スマートシャトル』は畝から畝への移動も自動走行できるから、飛躍的に薬剤散布を省力化・省人化を実現できる。人に関わる防除作業を75%も削減できるというから驚きだ。農薬被曝を回避できる魅力も「シャトルスプレーカ」から引き継いでいる。
この魅力的な「スマートシャトル」は、クボタが運営する農業学習施設 「KUBOTA AGRI FRONT」内の最先端の農業技術展示エリア「TECH LAB」に提供され、稼働する様子を見ることができる。小川さんによると、現在は技術を構築した段階であり、市販時期は決まっていない、とのこと。
それでも「遠からぬうちに市販化する前提で開発を続けていきます」と小川さんは展望を語る。
「試作機は、クボタ社との取り組みに向けて生産したものですが、KUBOTA AGRI FRONTの圃場は一般的なハウスとは比較にならないくらい綺麗に整っています。今後は、一般的なハウスでも使うことができる仕様を決めたり、耐久性を確認する必要があります。
対象とする作物は、トマトをメインとして、ナス、キュウリ、パプリカ、ピーマン、それにイチゴも視野に入れています。
早々に製品版を皆さまにお見せできるよう、開発を進めて参ります」(小川さん)
文:川島礼二郎