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「豊かな農村を子供に遺したい」熊本県の女性農家が語る想い

熊本地震で大きな被害を受けた南阿蘇村。この地で農業を営んできた4児の母・大津さんは「子供や孫の代まで美しい農村風景を遺したい」と願う。地方の農業を次世代へと受け継いでいくには、どうしたら良いのだろうか?「農家で良かった」と感じるエピソードを紹介するコラム最終回。

熊本地震から2年経って
感じたこと

熊本地震発災から2年が経ちました。この2年間ひたすら走り続けてきたのですが、自分にも家族にも無理が生じてきて、息切れをしてしまいました。

そこで地震から2年が経ったこの4月をもって「創造的復興」を目指した一連の活動には区切りをつけ、農家の嫁として、4児の母として、田畑に出たり、子供たちと向き合ったりしています。笑顔が自然になったね、と友人に指摘されました。

今回のコラムでは、2年間のまとめとして私が熊本地震前から抱いていた本来の目標を記させていただこうと思います。

突き詰めていくと、「こんな場所で子育てしたい!」と初めて訪れた時からずっと感じてきた農村の美しさや豊かさを、子供たちや孫たちにも遺していきたい、という想いに尽きます。

ただこの目標は、「言うは易く行うは難し」。先人たちがやってきたことを同じように続けていくだけでは、実現が叶わない状況だからです。


都市部への人口流出を
減らす工夫が必要

移住した時に74歳だった方は、既に90歳を超えています。戦後の農村を守り続けてきた昭和一桁世代がいなくなったら、農村の人口はぐっと減るでしょう。

機械化も効率化も進んでいますから、農家の数が減っても、農業についてはある程度はカバーできるように思いますが、「農村に住む人」がどんどん減ってしまったら、農村独特の風景や文化や生態系を子供たち世代にも遺していくことができません。価値を上げてバトンタッチすることもできません。

人を減らさないためには、今いる人の流出を防ぎながら、子供をたくさん産むか、IターンUターン等を増やすかしか方法がありません。

年齢上、自分自身の子供は4人以上には増えないと思いますが、阿蘇に限らず「農村で子育てしたい」という仲間を増やしていけたら、と考えています。

農村で育つ、五感と体感の発達した子供たちが増えることを祈りつつ。2年間、ありがとうございました。


プロフィール

大津愛梨(おおつえり)

熊本県南阿蘇村在住。O2ファームを営む4児の母。農業(無農薬米の栽培、あか牛の放牧)を営む傍らバイオマスの普及、実践に取り組む。都市と農村交流や地域活性化、文化伝承などの事業にも精力的に取り組む。


AGRI JOURNAL vol.08(2018年夏号)より転載

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