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産業連携による農産物出荷・価格形成の新手法を考える―前編―

“サステナブルなJA”を目指して、幅広な視点からの解決すべき課題を中央大学教授の杉浦宣彦氏に聞く連載。今回は、改めて「国消国産」を考える上で解決のヒントとなるJAと他産業との連携・協力の事例を紹介する。

国消国産の推進

日本の農業再生のカギとなるポイントはいくつかあります。そのなかでも、国内生産地でどの農産物がどれだけ採れるのか、また生産能力がどこまであるのかを知ること。さらに、タイムリーな農産物出荷や農産物加工によって「価格を作れる農業」を推進することの必要性を、このコラムでも幾度か主張してきました。

これは国産農産物の物流改革にもつながる主張なのですが、農産物の買いたたきを是とする、いわゆる貿易自由論者の方々からは「海外から輸入できるではないか」と、かなり批判されてもきました。しかし、筆者はJAの自己改革に関わってきたときから、海外輸入に依存した状態は不安定で、改善するべき問題であると訴えていました。

その後に、新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンが発生した欧州での農産物物流の現実を当時ベルギーで見聞きしていた筆者は、欧州が加工品も含めた農産物流通を、まず欧州内を最優先にしたこと。そしてFSO(国際食糧農業機関)の調査による、コロナ禍で2020年3月以降、食料の輸出規制をした国が約20ヶ国に及んだという結果から、食糧の海外依存に対する筆者の懸念はある程度のレベルで的中したように考えています。

我が国でも、中国からの業務用野菜やアメリカからの食肉の輸入減少など、グローバル化したサプライチェーンへの依存がいかに脆弱なものなのかが明らかになっていると思います。このような中、改めて「国消国産」という考え方に意味があると考えているのですが、それをすべてJAなど農業セクターだけでやるのは無理でしょう。そこで必須になるのが他産業との連携・協力、とりわけ流通セクターとの連携であり、近年は実際にいくつもの事例が出てくるようになりました。

今回のコラムでは、JAと運送会社との提携のケースを紹介。次回は後編として、実際に筆者がその場を視察させていただいた際の視察記を紹介したいと思います。



農産物の保存方法をめぐって

普段我々は、当たり前のように1年を通じてジャガイモやサツマイモをスーパーなどで買うことができますが、ジャガイモなどはほっておくと発芽してしまいます。したがってJAや農家では、出荷までの保存のために冷蔵庫での保管などが必要になります。しかし年間通して出荷するための貯蔵スペースを単協レベルで作るのは金額的にも難しく、さらに加工施設も併存するとなると、もっとハードルが上がることになるでしょう。

さらに、最近は倉庫内に作物の発芽を抑えるエチレンガスを充満させて一定の濃度を保つことでイモの成長を遅らせ、長期保存を行うのが主流になってきています。ですが、これもまた、単協でそれだけの施設をつくるのは、一部の県の経済連(全農)レベルでは難しいでしょう。また、タイムリーな出荷を考えるとなると、道路網なども考えなければなりません。つまり貯蔵施設のロケーションの選定も重要な要素になるはずですが、このノウハウもJA側は持ち合わせていないのです。

運送会社・流通加工業者との連携

このような問題を解決するために、大手運送会社や流通加工業者との連携は重要です。具体的には、ふらの農協と大手運送業者の丸全昭和運輸株式会社の連携事例を挙げることができるでしょう。子会社の丸全北海道運輸が持つ江別市のエチレン貯蔵施設を借り、ポテトチップスに加工するためのジャガイモの保存を一昨年よりスタートさせています。技術的には、倉庫内に作物の発芽を抑えるエチレンガスを充満させて、一定の濃度を保つことでイモの成長を遅らせて長期保存させるプロジェクトです。

規模はおよそ11aで、1tコンテナ1,448基分に相当する1,900tものイモを貯蓄できる形になっているそうです。最近の加工用イモのニーズと、それに伴う生産量の増加傾向は良いニュースではあるものの、ふらの農協で持っている6,000t貯蔵のエチレンだけでは到底容量が足りなかったそう。保管分がなくなったときには道内外から高値のイモを買っていたこともあったそうです。

今回の新たな倉庫の賃貸には、3つのメリットがあります。1つ目は、「賃貸」であるため自己資本比率にも影響がないこと。2つ目は、品薄の時期でも地域産のイモを加工でき、賃料や輸送費を含めても安価になること。そして3つ目は、秋に収穫されたイモを、品薄になる翌春まで保管できるため、価格競争力を高められることです。

その他の連携事例

なお、企業との連携という意味では、以前ご紹介したJAなめがたしおさいの例(サツマイモの貯蔵倉庫の一定の温湿度条件にすることで、芋表皮下のコルク層を増加させ、貯蔵中の腐敗を防ぐ「キュアリング処理」を徹底し、長期間の貯蔵が可能な体制を確立している)もあります。

こちらも単協だけでなく、白ハト食品工業などの企業との緊密な関係を築いています。農産物だけでなく加工品まで、国内だけでなく海外まで含めた出荷できる体制ができている点で、非農業セクターとの関係が有効に機能している先駆的な事例と言えるでしょう。

後編では、丸全昭和運輸のご協力を得て、実際に農協が使っているエチレン貯蔵施設や運送会社のネットワークをどう農産物流通改革につなげていくか、具体的な連携の可能性について考えてみたいと思います。



PROFILE

中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授

杉浦宣彦


現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。

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