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町による地下かんがいシステムで、安定生産を実現!

近年、土地改良施設(かんがい排水施設、農業用道路など)の新設や更新・管理、農地の基盤整備などを行う土地改良事業の成功事例が全国各地で挙がってきている。今回は北海道中富良野町での事例をご紹介。

地下かんがいシステムで
省力化と収益向上へ

たまねぎの生産量が全国トップクラスの北海道中富良野町。10年前、たまねぎの安定生産の為に国営土地改良事業を利用して開始した取り組みが、見事に実を結んでいる。

当時の中富良野町は、農地の狭小・点在化や排水不良により、効率的な機械作業やたまねぎの安定生産が難しいという課題を抱えていた。

同町にて農地の大区画化とともに行われたのは、暗渠排水を利用した地下かんがいシステムの導入だ。従来の農地では、簡易的な多孔ホースなどを使った地表かん水が一般的だ。しかし、多孔ホースの設置に時間がかかるなど、水管理に多くの労力が必要となる。

一方の地下かんがいシステムは、農地の地下に設置された暗渠排水管から水を供給するため、農地全体に均一にかん水できるという特長があり、水管理も省力化できる。

この暗渠排水を利用した地下かんがいシステム導入により排水性が向上し、きめ細かな水管理が可能となり、たまねぎの収量及び品質が向上し、安定生産が可能となった。

貯蔵庫の整備で
通年出荷体制を確立

中富良野町の取り組みで特徴的なのが、農地の整備だけでなく、出荷体制及び収穫作業の効率化にも目を向けたことである。

当時課題となっていたのは、通年出荷を確保するための長期的な品質の維持。そのような声を受け、JAふらのは同町の後押しもあり平成18年にCA貯蔵庫、平成29年にエチレン貯蔵庫を富良野市内各1箇所に整備をし、たまねぎの通年出荷体制を確立。価格の高い品薄時期の出荷が可能となり、関東・関西を主体に全国にたまねぎを出荷することができるようになった。

一方で、収穫期に農作業が集中するため、特にたまねぎの栽培においては収穫期の労働力を減らすことが課題となったため、JAふらのの営農サポート組織である(株)アグリプランを積極的に利用し労働力の軽減を図っている。また、JAふらのでは、茎葉付き収穫体制の確立(たまねぎの適期収穫)のため茎葉処理施設を建設しており、平成29年には、地区着工時より1.5倍(処理能力42t/時→66t/時)の処理が出来るように増設し、収穫作業の効率化に寄与している。

地下かんがいシステムの整備と農作物(主にたまねぎ)の通年出荷体制を確立することで利益が増加、各農家の所得を上げることに成功した。所得向上により、中富良野町では安定的に年間4~5人の新規就農者(H20年~H28年の新規就農者33名)を獲得できている。

また、たまねぎをはじめとした高収益作物の生産拡大により、町全体での販売額は10年間で56億円から69億円へと増加。年間で1億円以上を突破した農家も出現するなど、中富良野町は国内有数の一大農業地域になりつつあるという。


参考:農林水産省ホームページ 高収益な農業の実現に向けた取組事例集

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