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農業における「主要な3つのデータ」とは? “スマート農業”実現へのカギ

「データ」は「21世紀の石油」にたとえられている。では農業の場合、そもそも石油が湧き出てくる富の源泉の「油田」はどこにあるのか。農業にデータを活用するのであれば、まずはそこを掘り起こさないことにはすべてが始まらないのだ。農業ジャーナリストの窪田新之助氏が説く連載コラム第2回。

»第1回『「21世紀の石油」であるデータは、現代農業の可能性を広げるのか?』はコチラ

農業に存在する
主要な3つのデータ

東京大学大学院農学生命科学研究科の二宮正士特任教授(名誉教授)に以前取材した際、農業には大きく分けて三つのデータがあると教わった。環境と管理、生体に関するデータだ。

一つ目の環境データというのは気象や土壌、水といった植物が育っている環境に関すること。場合によっては作物以外の微生物の働きも入る。二つ目の管理データというのは、人為的な営農行為に関すること。たとえば種子や農薬、肥料をまいた時期やその量、あるいは農業機械をどこでどれだけの時間を動かしたのかも含む。三つ目の生体データというのは作物の生育状態に関すること。葉の面積、果実の糖度や酸度、収量といった作物そのもののデータである。

ここで気になるのは、それぞれのデータは十分に収集ができるようになってきたのか、ということだ。三つのデータについてそれぞれみていこう。


実用化が進む
環境データと管理データ

環境データを収集するためのセンサーはすでに多くが実用化されている。

たとえば田畑に設置して、温度や湿度、雨量のほか、水田の水位を計測するセンサーがある。約1㎞四方ごとの日別気象データでよければ、農水省系の研究機関である国立研究開発法人の農業・食品産業技術総合研究機構が開発した「メッシュ農業気象データシステム」を利用すればいい。1980年1月1日から現在の一年後の12月31日までの期間、日毎の気温の平均や最高、最低のほか降水量や日照時間など14種類の気象データが自由に取り出しできる。

続いて、管理データも多くのメーカーが支援システムをサービス化している。現状についていえば、多くの農家は記録を付けていても、せいぜい紙に手書きする程度だ。それだと過去のデータを引っ張り出すのに時間がかかるし、経年的な傾向を読み解いて営農に活かすのは難しい。支援システムを使えばそうした問題は軽減される。



進展が待たれる生体データ

技術的には十分に取れるようになってきた以上二つのデータに対し、今後の進展が待たれるのが生体データだ。もちろんドローンやセンサーを使ったリモートセンシング技術が発達してきたことで、生体データはさまざま取れるようになってきた。

ただ、そのほとんどは葉や実の形状や病徴など植物の外観から判定するのにとどまる。対して、植物の内部で何が起きるかをデータ化する技術は現時点においてまずもってみられない。先駆的な研究として、たとえば名古屋大学が植物の葉から搾り取る微量の液体から、植物の栄養や健康の状態を短時間で診断する方法を開発している。データ農業を発展させるには、こうした研究の進展が待たれる。

次回からはこうしたデータが農業の現場で実際にどう使われているか紹介していこう。

~つづく~

PROFILE

農業ジャーナリスト

窪田新之助


日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人RobiZyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。福岡県生まれ。

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