震災で食べ物の大切さを痛感。茨城県4Hクラブ会長が語る”農業という仕事”への誇り
2019/12/20
全国トップクラスの収穫量を誇る茨城県。新規就農者の受け入れ体制も整っているため、近年は就農する人が増加中だ。そんな農業大国・茨城県で、少量多品目栽培を行う「茨城県農業研究クラブ連絡協議会」の会長・込山槙一さんに、農業の魅力を語っていただいた。
メイン画像:笠間市を拠点に活動する「中央アグリクラブ」に所属し、「茨城県農業研究クラブ連絡協議会」の会長を務める込山槙一さん
収穫量日本一の作物も多数。
農業に最適な県、茨城
「茨城県は、大消費地である東京から、地理的に近い場所に位置します。また、平坦で広い土地があり、気候も比較的温和です。つまり、茨城県は、農業に向いている県なんです」。込山さんは、県内の農業についてこう説明する。
実際、県内の農産物の収穫量は多く、収穫量日本一を誇る品種も多々ある。
例えば、メロンやピーマン、レンコンなどがそうだ。また、こうした環境に惹かれ、都心などから茨城県に移り住み、農業をはじめる人が増えつつあるという。
込山さんの実家も、露地野菜を生産・販売する農家だ。学生時代より就農することを決めていたという込山さんは、大田市場などで修行した後、28歳で就農した。
現在は、父母とご自身の3人で、オクラやなす、ピーマン、ズッキーニなど、多種多様な作物を生産している。
「少量多品目を栽培しているのが、うちの最大の特徴です。年間で作っている作物を合計すると、40品目くらいになります。ほぼ毎日、何かしら収穫し、直売所に出荷していますね」と、込山さん。
込山さんが、少量多品目栽培を本格的にはじめたのは、およそ8年前のこと。
そのきっかけとなったのが、東日本大震災だという。
「震災の発生により、僕が住んでいる笠間市でも大きな被害がありました。一時期ではありましたが、停電し、さらには道路も寸断されてしまって。移動もできず、ライフラインも停止したなか、自分たちの畑で採れた野菜や果物を食べながら過ごしていました。
この間、とても怖い思いをしたので、“いざという時も食料を確保できるよう、毎日収穫できる形態に変えよう”と思ったんです」。
これと同時に、痛感したのは、食べ物の大切さ。また、人々の暮らしを支える農業という仕事にも、さらに誇りをもてるようになったと話す。
農業をアピールし
県の魅力を底上げするきっかけに
直売所で、その日収穫した野菜を並べていると、買い物客が待ってましたとばかりに野菜を手に取る。
「そんなシーンに恵まれると、本当にうれしくなりますね」と込山さん。
こうした農業の魅力を若手の農家志望者にも伝えるため、「茨城県農業研究クラブ連絡協議会」では、農業大学でのデモンストレーションを行なっているそう。もちろん、4Hクラブの存在をアピールするのも忘れない。
農業こそ、茨城県が誇る産業である、というのが込山さんの考えだ。“農業のPRをとおし、茨城県の魅力の底上げに貢献したい”と語る。
「実は茨城県は、『都道府県魅力度ランキング2019』で、7年連続で最下位となっています。県民たちが最下位であることに慣れつつあり、とくに解決法を考えていないように見える点も、少し気になりますね。
その反面、農業における収穫量は、全国でもトップクラスをキープしています。『魅力度ランキング』で最下位なのは不名誉なことですが、農業に関しては、誇れる部分が多々ある。県内外を問わず、農業の魅力をアピールしていきたいと思います」
PROFILE
込山槙一さん
1982年茨城県生まれ。露地野菜を手がける農家に生まれ、2013年に就農。就農とほぼ同時に「中央アグリクラブ」に加入し、2018年、2019年度ともに「茨城県農業研究クラブ連絡協議会」の会長を務める。
DATA
Text:Yoshiko Ogata