「ロゴは旗印」生産者の想いが伝わるロゴデザインの基本とは?
2021/05/31
ロゴは、いわば生産者の顔。生産者の思い、本質が表現されたロゴなら、きっと想像以上の効果をもたらしてくれる。農業×ブランディングを得意とする人気デザイナーたちに、農にまつわる“デザインの基本”を訊いた。
生産者の思いを表現し
やる気を引き出す
「戦国時代の合戦では、生きるか死ぬかの究極の場面でわざわざ旗が掲げられていた。旗は、戦のモチベーションを高めるものだったと思うんです。ロゴとは、旗印。生産者が自分たちの思いを表現するものでもあるし、気持ちを奮い立たせるものでもあります」。
株式会社ファームステッドの長岡淳一さんは、ロゴの効能をこう語った。制作は生産者との二人三脚だ。
「必ず現地へ赴き、生産現場を見て対話を重ねながら、コンセプトを決めていきます。土、栽培、品種などみなさん様々なこだわりがありますが、すべてをいっぺんに伝えるのは難しい。様々な要素が入るとロゴの視認性も損なわれます。本当に伝えたいことだけを削ぎ落とし、シンプルに伝えることを大事にしています」。
ロゴは、流行に左右されない、本質的な価値を伝える形であるべき。生産者自身も自覚していない本質を見極め、アウトプットするプロの技が必要になる。
「嬉しいのは、農家さんから喜びの声を聞けたとき。『やる気が出た』という声を聞くと、旗印としての機能を果たせたなと思えます」。
▶ POINT
☑ ロゴとは、旗印。生産者のモチベーションを高めるものである
☑ 丁寧に情報を削ぎ落とし、本質のみをシンプルにビジュアル化する
CASE STUDY
● なかや農場(北海道・東鷹栖町)
「雪蔵米」と名付けた自家ブランドで、「ゆめぴりか」と「ななつぼし」を丹精込めて生産・販売。石蔵の中に「米」が貯蔵されたビジュアルが印象的なロゴマークだ。
● フルーツのいとう園(福島県・福島市)
高級ぶどうを乾燥・加工して高級干しぶどうに。贈答用としての用途をターゲットにブランディング。高級感のあるユニバーサルなロゴが完成した。
● 多田農場(北海道・十勝)
モダンなロゴは、多田家に先祖代々続いてきた家紋がモチーフ。できあがったロゴは、加工品のラベルに統一デザインとして使用されている。
● かみむろ製茶(鹿児島県・志布志市)
自社ブランドを構築するタイミングで、ロゴマークを依頼。代表の「上室」さんの頭文字「上」をデザイン化した印象的なロゴができた。
● 福田農場(北海道・本別町)
本別町美蘭別という地区で先代からの畑を受け継ぎ、持続可能な農業を実践。この地に根ざすことの決意と誇りを表現するために「BIRANBETSU」の文字を組み込んだ。
● 十勝アルプス牧場(北海道・清水町)
6次産業化のブランディングを担当。旧名・橋本牧場だったが、牧場の絶景にヒントを得て改名。シンボルマークもかわいい子牛のイラストで特徴づけた。
● 尾藤農産(北海道・芽室町)
新しく作った加工場のためにロゴマークを作成。広大な畑の風景をイラスト風にあしらい、ロゴは生産者の人柄を表すような力強い筆文字の英文書体に。
教えてくれた人
株式会社ファームステッド代表取締役/クリエイティブディレクター
長岡淳一さん
1976年北海道帯広市出身。デザインで農業と地域を発信するモデルを作る地域振興ブランドプロデューサーとして日本全国で活躍中。グッドデザイン賞など受賞多数。6次産業化プランナー。
文:曽田夕紀子(株式会社ミゲル)
AGRI JOURNAL vol.19(2021年春号)より転載