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データ駆動型の米流通を創造する「スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム」設立大会レポート

農林水産省は、データ連携によるコメの高付加価値化を推進する「スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム」を設立。2021年8月3日には設立大会を開催。有識者の講演やコンソーシアムの説明が行われた。

スマート・オコメ・チェーン
コンソーシアム設立の経緯

コンソーシアム設立の背景には、農産物検査規格の見直しによる経緯がある。農林水産省では、2020年9月から「農産物検査規格・米穀の取引に係る検討会」を設置し、8回にわたって検討を進めてきた。

2021年5月にはとりまとめを公表。取り組みのひとつとして、スマートフードチェーンを米の分野で構築し、これを活用したJAS規格制定を民間主導で策定することを決定した

スマートフードチェーンとは

食品の生産から消費に至るまでの一連の流れをフードチェーンと呼ぶ。スマートフードチェーンとは、ICT活用によってフードチェーンのデータ連携を促進し、生産の高度化・販売における付加価値向上・流通最適化などを実現する基盤のことだ。

コメ分野でのスマートフードチェーンの構築と活用に向け、「スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム」では関係者の会員参加を募っている。
 

①講演
『オコメのグローバルスタンダードをめざして』

スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム設立大会は、農林水産省の野上浩太郎農林水産大臣のビデオメッセージ、東京大学大学院農学生命科学研究科 中嶋康博教授の挨拶からスタートした。

続いて、東京大学名誉教授であり、公益財団法人日本適合性認定協会理事長の飯塚悦功氏が登壇。品質マネジメントを研究している飯塚氏は、「オコメのグローバルスタンダードをめざして」と題した講演でコメ品質の標準化・認証について語った。

商品が売れるためには、下記のような3つの条件が必要だと示した飯塚氏。

・商品そのものの良さ(良質・適正価格・適時)
・その存在が知られているか(商品知識)
・欲しいときに入手できるか(販売チャンネル)

さらに、良いものが広まるには、市場原理、提供者の見識、指針の設定による標準化、認証制度、規制による誘導といった条件が必要だと説明した。

このうち、今回のスマート・オコメ・チェーンに特に関連するのが「標準化」や「認証」だ。良いものや良い方法の標準を定める「標準化」により、消費者がモノを探す際の手間が省かれ、生活は便利になる。また、第三者による評価制度や、基準を満たしたと認める認証制度は、能力の証明・向上につながる

さらに飯塚氏は、標準化・認証制度によって社会インフラ・競争力インフラが充実するしくみについて解説し、視野を広げて国際標準化について考えることが必要だと話す。

「スマート・オコメ・チェーンにより、健全な市場原理が機能すると期待しています。いずれはコメの消費拡大や輸出拡大につながるのではないでしょうか」とまとめ、講演を締め括った。

 

②講演
『スマート農業からデータ駆動型フードシステムへ』

次に、三重大学名誉教授であり、一般社団法人ALFAE代表理事の亀岡孝治氏が「スマート農業からデータ駆動型フードシステムへ」と題した講演を行った。

基礎知識として、フードシステムの概念や日本とEUでの違いなどを紹介。その上で、データ活用によるスマートフードチェーンへの移行について話を進めた。

スマート・オコメ・チェーンについては「コメの生産、乾燥・調整、検査、卸・精米、消費までの情報をクラウドで管理できます。コンソーシアムでは今後、国際標準化を視野に入れた海外調査やJAS規格案の策定などを行います」と述べる亀岡氏。

今後のスマート・オコメ・チェーンの展開として、「新しい切り口で日本米の食文化を発信する転機であり、環境課題の解決、食品廃棄・ロスの解決など、多角的に影響を与えられると考えます」と希望を覗かせた。

 

③講演
『スマートフードチェーンとコメ流通の連携』

飯塚氏と亀岡氏の講演を終えた後は、公益財団法人流通経済研究所農業・環境・地域部門部門長の折笠俊輔氏による「スマートフードチェーンの取組と、スマート・オコメ・チェーンとの連携について」の説明に移る。

「スマートフードチェーンの研究開発事業は、内閣府による『戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)』の一環として実施されています」と語り始める折笠氏。

流通データを使った新しいJAS規格の検討(フードチェーン情報公表JAS:仮称)について、図を用いて紹介した。

また、コメの消費動向について、現状は伸び率に悩んでいる傾向にあり、今後も減少していく予測が発表されていると解説。

「もっと需要を創造し、価値を向上し、生産性を向上させるため、コメ流通のDX化としてスマート・オコメ・チェーンが必要となります」と続け、業界全体を盛り上げていくためにスマート・オコメ・チェーンコンソーシアムへの参加を呼びかけた。

④まとめ
コメ業界全体で新たな仕組みの構築を

まとめとして、農林水産省農産局穀物課米麦流通加工対策室長 上原健一氏は、スマート・オコメ・チェーンコンソーシアムの活動や体制、今後のスケジュールについて提示した。

第1期会員募集は2021年8月20日に締め切られるが、第2期以降の募集については公式サイトで案内する。

会員募集後のスケジュールは以下の通りだ。

・8月下旬 ワーキンググループ募集開始、会員間の情報共有開始
・9月下旬 ワーキンググループの設置
・11月末〜12月上旬 国際ワークショップの実施
・2022年度 JAS規格素案の作成・現場実証など
・2023年度 規格の利用開始(目標)

最後に、農林水産省 平形雄策農産局長による閉会挨拶により、今回の設立大会は終了した。

興味があったものの見逃してしまった方のために、公式サイトには各種資料が公開されている。コメ業界に携わるならば、一度目を通してみることをおすすめしたい。

DATA

スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム

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