イチゴは特長を持った品種を活用して省力&高品質! おすすめの品種3選
2025/07/14

親株定植作業から始まり、数々のステップを経ながら収穫まで半年以上もの時間を要するイチゴの栽培。今回は省力化に役立つ3つの品種を紹介する。
育苗不要!労働時間と設備を
大幅削減できる「よつぼし」
画像提供:三重県
イチゴ栽培で一般的に行われる栄養繁殖では、人手と時間、施設が必要となる。収穫後から真夏にかけて実施される育苗は重労働だが、育苗作業を不要とする画期的なイチゴ品種が近年、脚光を浴びている。
その代表作が「よつぼし」。三重県、香川県、千葉県と農研機構が共同で開発した品種であり、2017年に品種登録された。
F1種子イチゴ品種は種から育てるため、増殖効率が非常に高いうえ、親株からの病害虫感染が発生せず、健康な苗を大量に作ることができる。一方でF1種子イチゴ品種は新しいタイプのイチゴ品種であるため、本圃への直接定植を含めた播種・育苗技術や栽培技術体系の確立が急がれる。
「よつぼし」は全国的に普及しており、種子繁殖型イチゴ研究会によると、「よつぼし」の種苗は、北は北海道、南は沖縄まで、全国の種苗取扱事業者から購入可能である。
大粒で多収なのに収穫・調製作業を
省力化できる「恋みのり」
イチゴ生産に関わる労働のうちの3割を、「選果・調整=出荷作業」が占めている。この選果・調整と収穫作業を大幅に省力化できる大粒&多収品種が「恋みのり」だ。農研機構九州沖縄農業研究センターで生まれた品種であり、2018年に品種登録された。
「恋みのり」は「あまおう」と比較して、調整時間を46%、収穫時間を26%削減できる。調整作業を省力化できるのは、「恋みのり」の果実は形状の揃いが良いからだ。
収穫作業の省力化は、花数が多過ぎず果房の伸びがよいので果実を見つけやすいからである。大粒で多収なのに収穫・省力化できる「恋みのり」は、九州を中心として東日本にまで普及しつつある。
病害虫のリスクと
枯死のリスクが低い「ベリーポップ」
三好アグリテックが民間企業として初めて開発したF1種子品種である「ベリーポップ」。種子からの育苗のため、イチゴの苗増殖で必要とされる母株の管理とランナー増殖による育苗が不要。
「ベリーポップ」には「はるひ」(三重県と共同開発)と「すず」の2種あり、「すず」の開発には約7年の歳月を要し、発売に漕ぎつけたのは2022年だった。
いずれもF1種子イチゴ品種であるため、病害虫のリスクがない状態から始められ、枯れてしまうリスクも低い。大量生産が期待できる一方、農薬やエネルギーの使用量も低減できる。硬質な果実であるため、選果や運送時に傷つく可能性を抑えられるのも特徴。
なお、ベリーポップの406穴苗は、「よつぼし」と同様の鉢上げ方法となっている。
文:川島礼二郎
AGRI JOURNAL vol.35(2025年春号)より転載