食品残さを活かしたエコすぎる農業〜福島の挑戦〜
2017/01/27
地域のJA、企業、自治体、農家がチームを作り、様々なプロジェクトを行う福島県。いままさに進められている「循環型農業」への取り組みについて、政策に深く関わる中央大学ビジネススクールの杉浦教授が紹介する。
食品残さを有効活用して
肥料・飼料を作る
いま福島では、これまで廃棄されていた「食品残さ」を活かして、資源循環型のエコワールドを作ろうという試みを行っています。
活用される食品残さは、食品加工など食品製造業の生産ラインで生じるものから、給食やレストランで発生する調理くずや食べ残しまで多岐にわたります。JAふくしま未来では、こうした食品残さを集めて加工処理し、肥料や飼料に活かしていこうとしています。
地域の食品残さから作った肥料を、地域の農地にまき、農作物を育てる。同様に、食品残さから生まれた飼料を、地域の牧場の牛に与え、美味しい牛乳や牛肉をつくる。そうした域内の循環システムを、地域一丸となって構築しようとしているのです。
カット野菜工場から
循環システムが動き出す
このプロジェクトの発端は、2016年1月に、JAふくしま未来と福島市の食品会社「銀嶺食品」が包括的業務提携契約を結んだところにありました。地元農産物を活用したパンやスイーツなど6次化商品の開発や販売に、協同で取り組んでいこうというものです。
銀嶺食品は、学校給食のためにパンを作ってきた会社として地元では知られた存在。現在、この会社をハブにして、こことつながる様々な食品製造会社、食品加工会社、流通・販売会社等と連携し、多様な6次産業化が手掛けられています。
こうしたなか、銀嶺食品が運営するカット野菜工場の利用についても検討されてきました。この工場から出る食品残さを、なんとか有効活用できないか? そこから出てきたのが、食品残さを活かした循環型農業という発想です。
先に述べた通り、最終的には、このカット野菜工場からの残さだけでなく、地域で生まれるいろいろな食品残さを買い取ってくる予定。ただし、もともとお金を払って廃棄されていたものですから、非常に安く入手できます。つまり、原料の調達コストが小さくて済む。また、地域内で調達できますから、輸送コストもそれほどかかりません。このあたりも、食品残さの肥料化・飼料化の大きな魅力といえるでしょう。
JAふくしま未来では、これを販売して収益を目指すとともに、この肥料を使って何を育てるかについても幅広い検討を進めています。ここでは6次産業化を念頭に、作った農作物をどんな商品に加工するのかを重視して、作付け作物を選定しています。
カット野菜の必須アイテムでありながら福島ではあまり生産されていないニンジンやレタス、ワイン醸造のためのブドウ、ウイスキーのための小麦など、様々な作物が候補に挙がっているところです。