外国人労働者が日本農業をどう変えるのか? 品目や栽培技術の選択にも影響
2020/01/06
深刻な農業の人手不足により、技能実習の外国人への依存が強まる一方だ。昨年12月の入管法改正によりどのように変化したのか、技能実習制度は、日本農業全体を改変する起爆剤となるのか。現代農業の本質を、明治学院大学経済学部経済学科教授の神門善久氏が説くコラム。
入管法改正と日本農業
外国人が単に労働目的で入国することを日本政府は表向きとしては禁じている。しかし、実際としては、「技能実習」の名目で、外国人が実質的な労働者として入国している。とくに農業では、日本人の心身が農作業にうとくなり、技能実習の外国人への依存が強まる一方だ。
技能実習の外国人農業労働者は、入国前にどの農場で働くかが決められていて、変更の自由が乏しい。また、いったん母国に帰れば、再度の技能実習を目的とした訪日は原則として認められない。
技能実習には1号から3号までの三種類がある。来日初年は技能実習1号とよばれ、12カ月経過時点で一定の要件を満たせば2号に移行して2年間の滞在延長が認められる。2号を終えた後、3号に移行してさらに2年間滞在できる場合もある。
実習期間中は、農閑期でも、外国人に対して住居や労賃をあてがわなければならない。高原野菜のように数カ月しか技能実習を設定しない農場もあるが、その場合は、毎年、新たな外国人を手配しなければならず、リクルートに膨大な費用と時間を消尽する。
おりしも、昨年12月の入管法改正(本年4月に施行)により、特定技能1号という新たな在留資格が創設された。農業を含む14業種について、外国人が簡単な語学と実技試験に合格すれば、特定技能1号の在留資格が与えられる(ただし、技能実習2号ないし3号の修了者は、この試験が免除される)。
特定技能1号に認定されれば、滞日期間がのべ60カ月になるまでは、帰国と再来日を繰り返しても在留資格が失効しない。つまり、外国人労働者が、農繁期にしぼって繰り返し訪日できる。また、14業種の中で特例的に、農業では人材派遣会社が外国人を雇用することが認められている。つまり、農繁期が異なる地域の農場間で、外国人労働者のやりとりができる。
季節に応じた外国人労働者の導入が容易になれば、各農場での品目や栽培技術の選択にも影響するし、さらには日本農業全体を改変する起爆剤になるかもしれない。
プロフィール
明治学院大学
経済学部経済学科教授
神門善久さん
1962年島根県松江市生まれ。滋賀県立短期大学助手などを経て2006年より明治学院大学教授。著書に『日本農業への正しい絶望法』(新潮社、2012年)など。
AGRI JOURNAL vol.13より転載