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“トリコデルマ菌”の働きをわかりやすく解説! 根張りを増やして収量アップへ

持続可能な農業の実現に向けて注目を集めているバイオスティミュラント。有用菌だけでなく、そのエサも配合した画期的な資材が、日本全国で効果を発揮しはじめた。そのメカニズムとは?

土壌改善を有用菌のチカラで。
幅広い作物に適用中

長崎県雲仙市のジャガイモ農家の課題であった土壌病害を飛躍的に改善し、収量アップを実現させたのが日本タルクとアグリバイオシステムが共同で開発した土壌改良材「V-プロテクトG」。ジャガイモやさつまいもで多くの成果を積み上げており、現在、里芋、大和芋、蒟蒻芋などへも展開を見込み、データを収集している。また、土壌環境改良の効果はいも類にとどまらず、他の野菜や花木の栽培にも及んでいる。

野菜の土壌病害対策は、化学農薬による土壌消毒が一般的な方法だが、病害を抑制する役割を持つ有用菌も殺菌してしまうことが課題だった。そこでアグリバイオシステム代表で農学博士の小山修さんは、土壌の有用菌を増やして病害菌よりも優位な環境を作り、作物の抵抗力を高めることに着目。数ある微生物の中から選んだのが、糸状菌(カビ)の仲間で、多くの病害菌に拮抗性と寄生性を示すトリコデルマ菌、中でも特に機能性の高い菌種である「トリコデルマ アスペレラム F-288株」だ。

 

 

有用菌を増殖させる仕組みが画期的!
栄養を作物に届けるメカニズムとは

トリコデルマ菌を活用したバイオスティミュラント資材は他にも存在するが、V-プロテクトGの場合は、トリコデルマ アスペレラム F-288株を採用していることがポイント。とはいえ畑の土壌の性質はさまざまなので、この有用菌が十分に増殖しないケースも想定し、増殖をサポートする工夫として有用菌のエサも配合しているのも画期的な点だ。土壌中のトリコデルマ アスペレラム F-288株は、病害菌を含む菌類に寄生して自分の栄養とし、抗菌活性物質を分泌することで、病害菌の成長と発達を阻害。作物が病気にかかりにくい環境を作り上げる。

土壌病害菌への寄生や、抗菌活性物質を分泌することで、土壌病害菌の生育を阻害する。また、有用菌が根の表皮内に侵入して植物の免疫システムを高め、土壌病害になりにくい環境を形成する。



また、トリコデルマ アスペレラム F-288株は土壌環境の改善のみならず、作物の生育を促進する働きも。菌糸が作物の根の表皮内に侵入し、土壌から微量要素や栄養素の取り込みをサポートすることで、生育が促進され、収量増や夏バテ防止効果が確認されている。

有用菌は根圏で生育し、土壌中のリン酸やミネラル(光合成に不可欠な鉄など)を可溶化することで植物の生育に寄与する。


V-プロテクトGを用いた圃場試験は全国で行われており、ジャガイモ、アスパラガス、ニンジン、ネギ、ナス、イチゴ、ブロッコリー等々の野菜にも土壌改善や収量増加の実績が報告されている。また、トルコギキョウやシクラメン、カーネーションなどの花の栽培にも適用し、幅広い作物に使えることがわかってきた。地域や作物のケーススタディを集め、さらに研究を推し進めているところだ。

イチゴの根の様子。左はV-プロテクトGなし、右はV-プロテクトGあり。根張りに違いが見られた。


カーネーションのポット栽培でも、V-プロテクトGなし(左)に比べて、あり(右)の方が根張りがよい。

「こうしたバイオスティミュラント資材を使うことは、安心安全な農業の実現にもつながります。実際に使用して、その効能を実感していただきたいですね」(日本タルク社員)。日本タルクは2024年5月に熊本で開催される農業展示会「J AGRI」に出展予定なので、直にV-プロテクトGの効果を訊ねてみてはいかがだろう。

 

DATA

V-プロテクトG

有用菌トリコデルマ アスペレラムF-288株と、エサとなる微生物を配合した土壌環境改良材。水耕を除く栽培方法で幅広い効果がある。初めて圃場で用いる推奨量は、作条散布で50kg/反、全層散布で100kg/反。有用菌だけを配合した「V-プロテクトサポート」を補助的に使用した方がいいケースもある。なお、家庭菜園に適したサイズの「V-プロテクトG mini」が新発売。Amazonで購入できる。

V-プロテクトシリーズラインナップ

V-プロテクトシリーズ 販売エリア 販売単位 主な適用先
V-プロテクトG 北海道以外 10㎏ 露地・施設栽培
V-プロテクト 北海道 100㎏ 露地栽培
V-プロテクトGH 北海道 10㎏ 施設栽培
V-プロテクトサポート 全国 100㎏ 露地・施設栽培
V-プロテクトG mini 全国 1㎏ 家庭菜園用

 

問い合わせ

日本タルク株式会社 アグリバイオ事業部
TEL 03-3257-3851


文/本多祐介 イラスト/岡本倫幸

AGRI JOURNAL vol.31(2024年春号)より転載

Sponsored by 日本タルク株式会社

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