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トラック業界における働き方改革! 物流2024年問題が農業にもたらす影響とは?

トラックドライバーの不足などにより、モノが運べなくなる「物流2024年問題」が注目を集めている。物流2024年問題は、農業にどのような影響をもたらすのだろうか? その対策となる物流の効率化や共同化などについて、流通経済研究所・折笠俊輔氏が解説。

物流2024年問題とは?

物流の世界でも、農業と同じように「担い手」不足が問題となっています。そのなかで進められているのが、トラック業界における働き方改革です。物流業界をホワイトな業界にして、高齢者や女性も担い手になれるように…という背景があり、働き方改革が進められてきました。

その一環として、トラックドライバーの「年960時間」の時間外労働の上限規制が2024年4月1日より適用されることとなったことが「2024年問題」として注目を集めています。特に注目されるのは、トラックドライバーの1日の拘束時間13時間以内(上限15時間以内)と規定されたことです。
ここで重要なポイントは13時間という制約は、トラックドライバーの拘束時間であり、トラックの運転時間ではない、ということです。つまり、積み込んで、トラックを運転し、目的地で積み下ろすまでのトータルの時間なのです。

輸送に13時間以上かかる場合、途中で積み替えたり、トラックドライバーが途中で交代したりといった対応が必要になります。そのため、遠方への出荷を中心に農産物の輸送をトラック会社に依頼した場合に「運べない」と拒否されたり、非常に高額な費用になってしまうような事態が想定されます。これが2024年問題です。特に農林水産物では、九州南部から大阪のマーケットへの輸送や、北東北から首都圏マーケットへの輸送などが、この規制に抵触すると危惧されています。




 

2024年問題への対応策

2024年問題への対応策には様々なものがありますが、ここでは3つほど紹介します。

①トラックの時間効率の向上
出発場所と到着場所が変わらない限り、運行距離を短くすることはできません。そのため、トラックが走行している時間を削減することは難しいのです。よって、トラックの時間効率を高めようと考えた場合は、荷下ろしなどの荷役の時間と、納品待ちなどにかかっている待機時間を削減するしか方法がありません。そこで、現在、国や関係者のなかで注力されているのが、農産物等の輸送におけるパレット利用の推進です。パレット利用の普及は、荷待ち時間や荷役作業時間の削減に貢献することが確認されています。パレット利用やパレットに合わせた段ボール箱などの整備は、今も継続して国でも取り組みが進められています。

②トラックの積載率の向上
国交省の平成28年度の調査によると、日本を走るトラックの平均積載率は約40%です。半分以上は空気を運んでいる、と揶揄されることもありますが、トラックの生産性向上を考えていく上では、積載率の向上に余地があるのです。

実際に、農産物の物流の現場を見ていると、とりわけ数百キログラムから4~5トン程度の単位での農産物の出荷が難しくなっているケースが多く見受けられます。数ケース単位の少量出荷であれば宅配便が使え、10トン近くになればトラックをチャーターできることが多いのですが、宅配便で送るには送料が高すぎ、かつチャーター便でのコストメリットがでない中間物量の出荷が難しくなるのです。距離の離れた大都市圏のバイヤーと旬の時期に毎週2トン程度を納品する商談が持ち上がったものの、物流が確保できず契約・出荷に至らなかった、といった話を聞くことも少なくありません。

このような場合、複数の生産者が連携して共同でトラックをシェアするような取り組みが有効です。生産者同士でグループを組んで、販売を一緒に行いながら、物流を共同化していく取り組みなども考えられます。自分だけで難しいこと(物量を揃えること)を、誰かと協力して解決する発想が重要です。

③地元の販路を開拓する
長距離輸送が難しいのであれば、近距離で販売することを考えることも重要です。地産地消にもつながりますし、鮮度の劣化も抑えられます。コロナウイルスの影響も落ち着いてきたことで観光業も復活しています。できるだけ輸送距離を短く販売できることも考えてみましょう。

いよいよ来年に迫った2024年問題ですが、これをきっかけに自分の物流を見直してみるのも良いかもしれません。




 

教えてくれた人

公益財団法人 流通経済研究所
主席研究員

折笠俊輔さん


小売業の購買履歴データ分析、農産物の流通・マーケティング、地域ブランド、買物困難者対策、地域流通、食を通じた地域活性化といった領域を中心に、理論と現場の両方の視点から研究活動・コンサルティングに従事。日本農業経営大学校 非常勤講師(マーケティング・営業戦略)。


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