【2026年度】都道府県のスマート農業、農業DX独自事業③「中部エリア」
2026.08.14
2024年に施行された「スマート農業技術活用促進法」の運用が本格化し、各県の2026年度予算には経営のデジタル化(DX)への強い意志が反映されている。第3回は中部エリア(北陸・東海)6県の独自事業を紹介する。
1.富山県|水田フル活用とスマート管理の徹底
2.石川県|園芸・畜産分野におけるデジタル実装の加速
3.福井県|スマート農業を核とした持続可能な産地づくり
4.岐阜県|中山間地域の課題を克服するデジタル技術
5.静岡県|消費者のニーズを直接捉える「販売DX」との連携を重視
6.愛知県|都市近郊農業の高度化とスマート化の融合
【富山県】水田フル活用と
スマート管理の徹底
スマート農業普及センターで自動操舵システムの実証(出典 富山県農林水産公社)
富山県は、全国でも有数の一圃場あたりの区画が整備された水田環境を背景に、2026年度予算において「とやま型スマート農業推進」関連の施策を重点的に展開している。
この枠組みでは、自動給排水栓や水位センサーの導入を支援することで、水管理にかかる労働時間を大幅に削減することを目指している。複数の圃場を一つの端末で一元管理できるシステムの構築を推奨しており、担い手への農地集積が進む中で、管理制度の向上を図っている。
また、ドローンによるリモートセンシングを活用した生育診断に基づき、必要な箇所に必要な量だけ施肥を行う可変施肥技術の実装に対しても助成を行っている。これにより、資材価格の高騰に対応しつつ、コシヒカリなどのブランド米の品質安定化を実現する体制を整えている。県は、これらの技術導入が単なる省力化にとどまらず、データの蓄積による科学的な営農判断を可能にする農業DXの確立を目指している。
【石川県】園芸・畜産分野における
デジタル実装の加速
石川県では、2026年度当初予算の方向性に基づき、スマート農業や農業DXの展開による生産性向上を協力に推進している。
この方針は、水稲のみならず、ブドウや加賀野菜などの園芸分野、さらには畜産分野におけるデジタル技術の導入を幅広く支援するものである。園芸分野では、ハウス内の環境制御システムや自動収穫ロボットの導入を支援し、労働力の確保が困難な果樹栽培などでの生産維持を図っている。畜産分野においては、牛の行動モニタリングシステムや自動給餌機の導入を促進することで、家畜の健康管理の精度向上と飼育管理の効率化を同時に達成することを目指している。
また、能登半島地域や奥能登豪雨からの復興を加速させるため、被災した農地の高度な管理や、新規参入者が効率的にスマート技術を習得して生業を再建できる環境整備に予算を投じている。県は、産地全体のデジタル化によって、生産から販売までを一気通貫で管理する仕組みの構築を後押ししている。
【福井県】スマート農業を核とした
持続可能な産地づくり
福井県は、2026年度において地域全体でスマート技術を共有し活用する「農業支援サービス」の導入や定着を後押ししている。
例えば、高額な自動走行農機やドローンを個人で所有するのではなく、地域のオペレーター組織やコントラクターが導入し、複数の農家の作業を受託する仕組みを国や市町とも連携して強化している。これにより、小規模な農家であっても最新技術の恩恵を受けられる環境を整えている。
また、園芸分野では、AIを活用した収穫予測システムの導入を支援し、市場への計画的な出荷を可能にすることで、農家所得の安定化を図っている。現場で得られたデータ不足の中でも、最適な栽培モデルを構築する取り組みも進められており、担い手不足の中でも産地の活力を維持する仕組みを構築している。
【岐阜県】中山間地域の課題を
克服するデジタル技術
御嵩町で自動操舵システムの実証(出典 東海農政局)
岐阜県では、急峻な地形や小規模な圃場が多い中山間地域の課題を解決するため、2026年度に「スマート農業技術導入支援事業費補助金」などを推進している。この支援策では、傾斜地でも安全かつ効率的に作業ができる自走式草刈機や、農業用ドローンによる防除・運搬技術の導入を重点的に支援している。また、鳥獣被害が深刻な地域において、AIカメラやICTを活用した捕獲・監視システムの整備に予算を充てており、生産現場の多角的なリスク管理をデジタルの力で支援している。
施設園芸が盛んな地域では、高度な環境制御技術に加え、栽培環境の見える化やデータ活用支援も行っている。県は、これらの技術を組み合わせることで、地形的な不利条件を克服し、中山間地域においても持続可能な農業経営が継続できるモデルを提示している。さらに、若い世代の就農者がデジタル技術を武器に高い収益性を確保できるよう、技術研修とセットでの導入支援を行っている。
【静岡県】消費者のニーズを直接捉える
「販売DX」との連携を重視
静岡県は、茶やミカンといった県を代表する作物の国際競争力を高めるため、2026年度もスマート農業や農業DXに関わる推進施策を実施している。茶業においては、自動摘採機と連動した品質予測システムや、製茶工程の自動化・最適化を図る技術の導入を支援している。これにより、熟練の技術をデジタル化し、次世代への継承をスムーズにする狙いがある。
施設園芸では、全国をリードする環境制御技術をさらに進化させ、複数のハウスを遠隔で一括管理するプラットフォームの構築を後押ししている。また、国の果樹産地強化施策等とも連動し、ドローンによるリモートセンシングをミカン園などの急傾斜地での病害虫診断や収穫予測に活用する取り組みも進められている。
静岡県の特徴は、生産現場のDXだけでなく、消費者のニーズを直接捉える「販売DX」との連携を重視している点にある。データに基づいたマーケティングを支援することで、ブランド価値の最大化と高収益化を両立させる体制を整えている。
【愛知県】都市近郊農業の高度化と
スマート化の融合
名古屋市で環境制御型のミニトマト有機栽培(出典 東海農政局)
愛知県は、巨大な消費地を抱える都市近郊農業の特性を活かし、2026年度当初予算において「あいち型産地パワーアップ事業費補助金」や「スマート農業推進事業費」を推進している。
これらの事業では、高収益な施設園芸における完全自動制御ハウスの導入や、高度な選別・包装システムの自動化を支援している。労働力の確保が極めて厳しい都市近郊において、自動化による省力化は経営維持に不可欠であり、県は多額の予算を投じてこの実装を加速させている。
西尾市でハウス環境や出荷予測のデータを関係機関で共有(出典 中部農政局)
また、水田農業が盛んな西三河地域などでは、大規模な経営体によるロボットトラクターの多台数同時走行の実証と実装を支援しており、極限までの効率化を追求している。
さらに、県内の自動車産業などで培われた高度なものづくり技術を農業に応用する「農工連携」による独自機器の開発・導入も支援の対象となっている。県は、最新技術をいち早く現場に落とし込むことで、全国の都市近郊農業の先導的な役割を果たすことを目指している。
取材・文/アグリジャーナル編集部
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