【2026年度】都道府県のスマート農業、農業DX事業➄「中国・四国エリア」
2026.09.08
中国・四国エリアの9県は、2026年度当初予算においてスマート農業と農業DXを推進する施策を本格化させている。中山間地域の多機能化や施設園芸の高度化、労働力不足を補うサービス事業の育成など、各県が抱える課題に対し、デジタル技術を用いた具体的な施策を提示している。
1.島根県|中山間地の持続性を支えるスマート技術の社会実装
2.岡山県|農業支援サービスの広域的な展開と産地強化
3.広島県|データ駆動型農業による経営の強靭化
4.山口県|やまぐち版スマート農業の普及と裾野の拡大
5.徳島県|国庫補助を活用した栽培体系の抜本的転換
6.香川県|農業DXを通じた省力化と高付加価値化の両立
7.愛媛県|柑橘王国を守る傾斜地スマート農業の確立
8.高知県|次世代型施設園芸の高度化と環境制御の進化
9.鳥取県|持続可能な水田農業を支える自動化技術
【島根県】中山間地の持続性を支える
スマート技術の社会実装
播種作業中の高速高精度汎用型播種機(出典:島根県)
島根県は、2026年度当初予算においては中山間地域の農業維持を目的としたスマート農業の導入支援を強化している。県独自の「島根型スマート農業推進事業」の枠組みでは、小規模な耕作地が点在する地形的特性を考慮し、ドローンや自動操舵装置の導入に対する補助枠を拡充した。特に、複数の農家や集落営農組織が共同で利用する機器の導入を優先的に支援することで、投資負担の軽減と稼働率の向上を狙っている。
また、松江市などの主要自治体とも連携し、経営規模に応じたきめ細やかな支援体制を構築している。デジタル技術の導入を単なる省力化に留めず、収穫データの活用による収益性の向上につなげるための伴走支援も予算に盛り込まれた。
【岡山県】農業支援サービスの
広域的な展開と産地強化
岡山県は、農業者の高齢化と労働力不足を背景に、農業支援サービスの育成に重点を置いた予算編成を行っている。2026年度は、個々の農業者が高額な機械を購入する支援に加え、ドローンによる散布やロボットトラクターによる作業を請け負う「農業支援サービス事業者」の参入・事業拡大を強力に後押ししている。これにより、産地全体での機動的な作業体制の構築を目指す。
さらに、特産であるブドウや桃などの果樹園地においては、傾斜地でも利用可能な自動草刈機やリモートセンシングを活用した生育診断技術の普及に注力しており、高品質な「おかやまブランド」の維持と省力化を両立させている。
【広島県】データ駆動型農業による
経営の強靭化
広島県は、生産から流通、さらには消費までをデジタルデータでつなぐ「データ駆動型農業」の推進を2026年度の主要施策に掲げている。環境制御システムを導入した最先端の大型ハウスでの施設園芸を中心に、温度や湿度、日射量などのデータをクラウド上で分析し、最適な栽培管理を自動で行う体制を整備している。
また、水稲やキャベツなどの露地野菜においても、GPSを活用した自動操舵システムの導入を支援することで、作業精度の向上と熟練技術の継承をサポートしている。県が運営するデータプラットフォームの活用を促し、地域の農業者が市況に応じた計画的な出荷を行える環境づくりを進めている。
【山口県】やまぐち版スマート農業の
普及と裾野の拡大
「レーザーレベラー」による農地の均平作業(出典:JA山口県)
山口県は、現場の農業者が技術を身近に感じられるよう、導入費用だけでなく「学び」の機会や普及施策にも予算を割いている。2026年度の「やまぐち版スマート農業推進」関連施策では、GPS直進機能付トラクターや有害鳥獣の通報システムなどの導入を幅広く支援している。
これに加え、県外の先進地視察やセミナー参加へのサポートを行う独自の制度を維持している。最新技術を実際に確認し、自らの経営に取り入れられるかどうかを判断するための情報収集を県が後押しする形だ。宇部市などの自治体独自の加算措置もあり、県と市町が連携してスマート農業の裾野を広げる姿勢が鮮明になっている。
【徳島県】国庫補助を活用した
栽培体系の抜本的転換
徳島県は、単なる機械の置き換えではなく、スマート技術の導入効果を最大化するための「栽培体系の転換」を強力に後押ししている。2026年度は、国の「スマート農業技術体系への包括的転換加速化総合対策事業」なども積極的に活用し、品目ごとの個別技術課題を解決するため、産地全体での取り組みを推進している。
これには、自動化に適した圃場整備や栽培方法の変更が含まれ、市町村や農業支援センターによる専門的な助言と一体となった支援が行われる。特に労働生産性の高い農業構造への転換を目指し、大規模な法人だけでなく、産地を形成する複数の取組主体が連携して応募できる仕組みを構築している。
【香川県】農業DXを通じた省力化と
高付加価値化の両立
水稲の自動水管理システムの実証(出典:香川県)
香川県は、日本一面積が小さいという地域特性を活かし、限られた産地での「高付加価値化」と「極限の省力化」を農業DXの目標に掲げている。2026年度予算では、オリジナルブランド米や野菜栽培において、水田の自動水管理システムやドローンによるピンポイント農薬散布技術の導入を後押ししている。
また、讃岐牛をはじめとする畜産現場では、首輪型のセンサーを用いた発情発見や健康管理の自動化を支援しており、夜間管理の負担軽減に大きな成果を上げている。コンパクトな産地であることを強みに、技術の普及スピードを加速させる戦略だ。
【愛媛県】柑橘王国を守る
傾斜地スマート農業の確立
愛媛県は、県農業の柱であるミカンをはじめとした柑橘類の生産維持に向け、2026年度は「傾斜地スマート農業」の実装に予算を重点配分している。平地と異なり、大型農機の導入が難しい急傾斜の園地において、小型の自走式運搬機械や自動防除装置、ドローンによる資材運搬技術の導入を強力に支援している。
また、熟練農家の「匠の技」をセンサーで数値化し、新規就農者への技術継承を早めるプロジェクトも継続されている。気候変動による果実の品質管理が難しくなる中、マルチシートと自動潅水制御を組み合わせた最新システムへの助成も行われている。
【高知県】次世代型施設園芸の高度化と
環境制御の進化
ロボット技術を活用した自動薬剤噴霧装置(出典:総務省)
高知県は、全国に先駆けて推進してきた「次世代型施設園芸(高知アグリネット)」の仕組みをさらに深化させている。2026年度は、ハウス内の環境データを活用した収穫予測や病害虫の早期発見AIシステムの現場実装を重点的に支援する。
ピーマンやナス、などの主要品目において、燃油高騰に強いヒートポンプと環境制御装置を組み合わせた省エネ型スマートハウスへの移行を促進している。また、中山間地域が広がる県内の特性に合わせ、小規模なハウスでも導入しやすい安価で高性能な通信機器の普及にも予算を充てている。
【鳥取県】持続可能な水田農業を支える
自動化技術
自動操舵トラクターによる白ネギ土寄せ作業(出典:鳥取県)
鳥取県は、白ネギやスイカといった特産野菜のスマート化に加え、水田農業の維持に向けた施策を2026年度当初予算に盛り込んでいる。特に、水稲栽培における自動走行トラクターやコンバインの導入支援を進め、担い手への農地集約に伴う作業ピーク時の労働力不足を解消することを目指している。
また、水田の水管理を自動化する水位センサーや自動給排水栓の導入を支援することで、夏の過酷な見回り作業からの解放を進めている。地域の集落営農組織が最新技術を導入する際の共同利用補助も用意されており、地域ぐるみでの持続可能な営農体制づくりを進めている。
取材・文/アグリジャーナル編集部
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