【2026年度】都道府県のスマート農業、農業DX事業④「近畿エリア」
2026.09.03
2026年度の近畿エリア各府県の取り組みや予算には、都市近郊農業の特性を活かした高付加価値化と、中山間地域における省力化技術の実装という二極の課題に対する具体的な施策が並んだ 。2024年に施行された「スマート農業技術活用促進法」を土台に、実証から社会実装へと舵を切る各自治体の支援策を解説する。
1.京都府|スマート技術の実装で「京もの」の持続可能性確保
2.大阪府|都市型農業のDX化によるスマート産地形成
3.滋賀県|スマート農業技術活用促進法に基づく生産革新の加速
4.三重県|攻めの農業投資とDX基盤の整備
5.和歌山県|果樹王国の維持に向けた省力化・環境制御技術の導入
6.兵庫県|サービス事業者との連携で全県的なスマート化の推進
【京都府】スマート技術の実装で
「京もの」の持続可能性確保
京田辺市のオランダ式高生産性施設(出典 近畿農政局)
京都府は、2026年度も継続して独自の「スマート農林産業実装チャレンジ事業」を施策の柱に据えている。この事業の特徴は、水稲などの土地利用型作物だけでなく、京野菜や茶などの地域特産物を狙い、生産性向上を目指す「その他の作物」に対してもきめ細やかな支援枠を設けている点である。
特に、主な経営基盤が中山間地域に位置する場合、補助率を通常の10分の4から10分の4.5以内へ引き上げるなど、条件不利地におけるデジタル化を重点的に後押ししている。また、管内の舞鶴市などの自治体とも連携し、節水型乾田直播などの新しい栽培体系に挑む農業者への普及活動を支えるなど、現場の創意工夫を後押しする体制が整っている。
【大阪府】都市型農業のDX化による
スマート産地形成
大阪府は、限られた農地で高い生産性を維持するため、スマート農業技術を用いた産地全体の機能強化や、スマート技術導入・産地強化推進に努めている。2026年度は、農林水産省が強化する「農業支援サービス」の活用や国庫補助金とも連動しつつ、都市近郊ならではの直売所連携や需要予測に基づいたデータ活用による生産管理の高度化に注力している。
特に、生産者が高額な機械を自ら所有するだけでなく、ドローンによる請負防除やデータ分析サービスをはじめとした外部委託(農業支援サービス)を現場に導入しやすいよう、国や関係機関と連携した環境整備を進めている。これにより、初期の設備投資を抑えつつ最新技術の恩恵を享受できる環境を整え、新規就農者の早期経営安定化を図っている。
【滋賀県】スマート農業技術活用促進法に基づく
生産革新の加速
たまねぎのスマート機械化体系による省力化の実証(出典 滋賀県東近江市)
滋賀県は、スマート農業技術活用促進法に基づき制定された「生産方式革新実施計画」に沿った取り組みに対し、国庫補助事業を活用した手厚い導入支援の公募窓口を担っている。2026年度の「スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業」の枠組みでは、認定を受けた促進事業者が実施する技術導入に対し、要件に応じて国の規定に基づき補助上限が最大5000万円まで適用される。
琵琶湖の環境保全を重視する地域性を反映し、自動走行農機による精密施肥やリモートセンシングによる環境負荷低減を伴う、環境調和型スマート技術への転換が強く推奨されているのが特徴である。
【三重県】攻めの農業投資と
DX基盤の整備
三重県は、2026年度当初予算において農業分野のデジタル化や担い手確保、産地パワーアップ・スマート農業推進に重点配分を行った。特に、次世代を担う担い手の確保と育成に向け、スマート農業の実装を通じた労働負担の軽減を掲げている。
具体的には、園芸施設における環境制御システムの高度化や、畜産現場におけるAI監視カメラを用いた個体管理など、稼げる農業への転換を促す設備導入への支援を推進している。さらに、これらデジタル機器の運用を支えるための情報発信や、蓄積されたデータの活用を指導する専門家・サポーターによる指導など、ソフト面でのサポート体制も整えている。
【和歌山県】果樹王国の維持に向けた
省力化・環境制御技術の導入
和歌山県では、日本一の果樹産地を維持するための「農業生産基盤の強化」に予算を重点投入している。2026年度は、災害に強い園芸ハウスの整備と併せ、最新の環境制御システムの導入支援を強化した。特に注目すべきは、急峻な地形での果樹栽培を支援するドローンによる請負防除の導入支援や、それに関わる資格取得の推進である。
労働力不足が深刻な中で、人の手によらない防除体制の構築を急ぐとともに、ゲノミック育種価を活用した和牛の生産体制強化など、畜産分野のDXについても施策を展開し、県産農畜産物の競争力向上を図っている。
【奈良県】地域構造の転換を支える
小規模・高機能スマート農業
奈良県内では、管内の各市町村が地域の営農実態に合わせたスマート農業技術の普及を進めている。例えば生駒市が実施する「生駒市スマート農業推進事業補助金」では、生産性向上や省力化を目的とした機械装置の導入に対し、1/2の補助率で最大60万円(要件による)を交付し、小規模な経営体でも導入しやすいよう配慮している。
また、五條市をはじめとした地域農業の構造転換支援では、農業法人が主導する大規模な経営改善に対し、国の交付金や支援施策を活用した手厚い支援枠を設けている。地域によって異なる農業経営の規模に応じ、デジタル技術による業務効率化を多層的に支える仕組みが構築されている。
【兵庫県】サービス事業者との連携で
全県的なスマート化の推進
洲本市でドローンを用いたキャベツの病害虫防除作業(出典 兵庫県)
兵庫県は、農業者が自ら技術を導入するだけでなく、外部の「農業支援サービス事業者」を活用したスマート化を強力に推進している。県が窓口を担う国庫の加速化総合対策事業では、スマート農業機械の導入(ハード事業)に加え、サービスの企画や専門人材の育成、データ収集・分析などのソフト事業にも幅広い支援が適用される。
国の規定に準じ、補助率は2分の1以下で、スマート農業機械を導入する場合は1主体あたり最大3000万円、さらに「生産方式実装革新実施計画」に合致する場合は最大5000万円まで上限が拡大される。県内全般において、技術を「使う」側と「提供する」側の双方を後押しすることで、持続可能なスマート農業のエコシステム構築を目指している。
取材・文/アグリジャーナル編集部
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