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高温障害を抑え収量アップ! 回収・廃棄が不要な、土壌分解される「紙製」マルチとは?

環境負荷・作業負荷の軽減を叶え、収量の向上も可能にする資材が、王子エフテックスの紙製マルチシート「OJIサステナマルチ」。今後、農家や家庭菜園愛好家から注目を集めそうだ。

<目次>
1.土中にすき込んで分解! 環境にやさしい紙製マルチ
2.地温上昇抑制効果で10%の収量増加も
3.PE製マルチ・生分解性マルチとのランニングコスト比較
4.OJIサステナマルチの特徴
5.選べる3タイプ! OJIサステナマルチ

 

土中にすき込んで分解!
環境にやさしい紙製マルチ

王子グループは、30年ほど前に紙製マルチシートの利点に注目し、商品開発に乗り出している。

「ただ、当時できあがった商品は、マルチとしては厚手。あまり扱いやすいものではなく、市場に浸透しませんでした」と話すのは、王子エフテックスの商品開発本部に所属する森本親さん。

しかしその後、製紙技術が進歩し、王子エフテックスでも薄手のマルチの開発に成功。2024年春にリリースした「OJIサステナマルチ」は、約30年前に開発された商品と比べると、1/3程度の厚さとなっている。厚さは1/3程度になったものの、十分な強度を備えているのが、本品の特長の一つ。

「OJIサステナマルチもポリマルチと同様に、トラクター用マルチャーを使って展張できます。マルチの破損を防ぐため、トラクターを起動してからしばらくの間はゆっくりと走らせる必要がありますが、以降はポリマルチを張る時と同等のスピードで走らせても問題ありません」と森本さん。

OJIサステナマルチの展張の様子

展張時に多少のコツが必要となるが、導入後、これをしのぐメリットを実感できるはずだ。まず注目したいのは、OJIサステナマルチの基本的な性質。本品は木材セルロースでできているため、後々、マイクロプラスチックの発生元になる心配がない。

さらには土中にすき込むと自然分解されるため、使い終わったマルチの焼却処分などが不要に。本品は環境への負荷軽減と労力削減を叶える、地球と人に優しい資材なのだ。

<すき込みによる土中分解の様子>

熊本県でOJIサステナマルチ ハードタイプを使用。2ヶ月で土中に紙の存在はほぼない状態に。


地温上昇抑制効果で
10%の収量増加も

さらにOJIサステナマルチには、ポリマルチを張った時と比べ、地温の上昇が抑えられるというメリットも。夏場の高温による影響が深刻化している今、農業の現場でも、高温障害の増加が顕著になっている。

王子エフテックスは、OJIサステナマルチ、生分解性フィルムマルチ(黒)、ポリエチレン製マルチ(黒および白黒)のそれぞれが地温に与える影響を調査。この調査では、OJIサステナマルチを張った場所の最高地温は、生分解性フィルムマルチ(黒)、ポリエチレン製マルチ(黒)を張った場所の最高地温より約5度低かったことが判明した。また、ポリエチレン製マルチの白面を上にして張った場所よりも、最高地温が約2度抑えられたという結果も。

■PE製マルチ(黒)、生分解性マルチ(黒)との地温比較


2023年5月18日~2023年8月21日までの期間、マルチ下の土中10cmで温度測定実施。

■PE製マルチ(白黒タイプ)との地温比較


2024年8月15日~2024年8月21日までの期間、マルチ下の土中10cmで温度測定実施。

森本さんは、「これまで国内の200ヶ所以上で本品の展張試験を実施しました。これを通し、特に中温性野菜や冷涼性野菜などの栽培時に本品が効果を発揮することが明らかになりました。生育不良が改善され、10%ほど収量が増加したというデータも得られています」と説明する。収量を増やし収益を上げたい農家にも、OJIサステナマルチはおすすめだ。

PE製マルチ・生分解性マルチとの
ランニングコスト比較

ポリマルチよりも、OJIサステナマルチの方が高価なのは確か。しかし、本品を導入することで、使い終わったマルチを剥がす際の人件費や、マルチの廃棄に伴う費用もカットされる。もろもろの経費を合算してみると、OJIサステナマルチの導入が経費増加のきっかけにならないとわかるはずだ。

また紙でできている本品は、十分に密閉すれば長期間にわたって保管可能。余ったマルチも翌シーズンまで保管でき、無駄なく使用できる。

■各種マルチのコスト比較

OJIサステナマルチは2025年春より、全国の量販店でも販売を開始している。ぜひ一度その使用感を試してみてほしい。

OJIサステナマルチの特徴

土壌にすき込むと分解される

収穫が終わったら畑にすき込めるのが、OJIサステナマルチの特長の一つ。だんだんと水と二酸化炭素に分かれ、最終的には完全に分解される。スタンダードタイプをすき込んだ場合は、約2ヶ月で分解。九州地方など温暖地では分解のスピードが早く、約1月半で分解されたという実験結果も。なおマルチとして地表を覆っている間は、分解が進むことはない。


回収作業が不要

ポリマルチを畝に張った場合、収穫後、使用済みのマルチを剥がす作業が必要になる。圃場の環境によっては機械を使用できず、人力でこの作業にあたらなくてはならない。一つ一つの畝から中腰姿勢でマルチを剥がす作業は、農家にとって大きな負担だ。

土中で分解されるOJIサステナマルチを導入すれば、マルチを剥がす作業とは無縁に


産業廃棄物処理が不要

産業廃棄物の処理にかかる費用と労力は、農家にとって悩ましいものの一つ。土がついたマルチを回収場所へ持ち込むと、処理にかかる費用がかさむため、圃場から回収したマルチを洗って乾燥させるという作業を欠かさず行っている農家は多くいる。

洗浄・乾燥の作業を不要にし、産業廃棄物の処理コストを軽減させるのが、OJIサステナマルチだ。

選べる3タイプ!
OJIサステナマルチ

ハードタイプ

色:ベージュ/黒
厚み:0.085mm
敷設期間の目安:6~8ヶ月(にんにく、たまねぎなどの生育期間に相当)


スタンダードタイプ

色:ベージュ/黒
厚み:0.085mm
敷設期間の目安:4~6ヶ月(ニンジン、カボチャ、イチゴなどの生育期間に相当)


ソフトタイプ

色:白/黒
厚み:0.090mm
敷設期間の目安:2~4ヶ月(トマト、きゅうり、ピーマン、大根、ほうれん草などの生育期間に相当)

※敷設期間はマルチシートとしてご使用いただける期間の目安です。土壌・天候条件により前後します。
※厚みにはばらつきがあります。

PROFILE

王子エフテックス株式会社 商品開発本部
マーケティング部 マネージャー

平井加奈さん(左)

王子エフテックス株式会社 商品開発本部
開発企画グループ マネージャー

森本親さん(右)

 

問い合わせ

王子エフテックス株式会社
TEL:03-5550-3073
MAIL:oji-ftexmdd@oji-gr.com


文:緒方よしこ

AGRI JOURNAL vol.35(2025年春号)より転載

Sponsored by 王子エフテックス株式会社

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