新規就農者必見! 「農地確保」が成功するポイントと進め方
2018/11/06
農業参入における農地の確保は、大きな課題となっている。利便性に優れている農地を確保できるのか、また先人達によって代々受け継がれてきた農地を簡単に借りられるのか……など一筋縄ではいかないだろう。今回は、中長期的な視点で事業展開を考えた場合の農地確保のポイントを紹介しよう。
農地の確保は
簡単ではない
農業参入時の一番大きなハードルは、農地の確保と言ってもよいだろう。中山間地域のように後継者もおらず、農地をすぐにでも集めることができるようなエリアもあるが、利便性のよい地域ほどなかなか集まらないのが現実である。
さらに、農業参入企業が増えている一方で撤退する企業もあることから、地権者からの信頼を得られにくい状況にもなっている。
また、全国的には、農地がどんどん余ってくるという情報が飛び交っているため、簡単に農地を借りることができるイメージを持たれがちであるが、実際には信頼関係の無い中で、代々受け継いできた農地を借りることはなかなか簡単にはいかないのだ。
今後、中長期的な視点で事業展開を考えた場合、どのような農地をどのように確保すべきかをお伝えしよう。
地域に受け入れてもらうための
心がまえとして
高齢化した地権者の方々は、年々農地管理が大変になってきているため、誰かに農地を貸して管理して欲しいと考えていることも多い。一方で、知らない企業や人に農地を貸して、集落に迷惑をかけてしまう事態が起きたら、と躊躇してしまい、なかなか話が進まない。結局のところ、地権者の方々は、「信頼できる人に農地を貸したい」というのが本音なのだ。
初めて農業を行う場合、いきなり大規模に始めるのはリスクが高いため、少しずつ農地を拡大していく方がよいだろう。確実に管理できる面積から始めることで、地域の方々からの信頼を得ていくことも非常に重要な点である。一見地味に思われるかも知れないが、こうした信頼関係の構築こそが、農地拡大の基本と言えるのだ。
そのためにも、挨拶や日ごろの生活態度についても改めて見直し、地域の方々が、代々大切に受け継いできた農地を守っていく気持ちで農業に取り組んでいこう。
ポイント①どのような農地を確保すべきなのか?
まず、何を栽培するかによって、集めるべき農地のタイプが変わってくる。米を栽培するのであれば、水が抜けにくい水田の確保が必要になるわけだが、ここでは一般的な野菜を栽培するための農地確保について考えてみよう。
考え方の基本は、育てる野菜の特性に合わせて探すということになるが、特に以下のポイントは共通として重要な点になる。
・管理上の利便性:事務所や自宅から通いやすい
・土質:水はけがよい
・日照条件:日陰になるような阻害物がない
・異物:農地に異物が混入していない
・拡張性:近隣で拡大の余地がある
・道路幅:農地に隣接した道路が堆肥搬入時でも活用しやすい
ポイント②どうやって農地を確保するのか?
一般的には、市町村の農政課や農業委員会へ問い合わせるか、農地中間管理機構へ確認することになるだろう。ただし、いずれの場合も信頼されるような事業計画が無いと、簡単には農地を紹介してもらえない。押さえておきたいポイントは以下の通りだ。
・誰が責任を持って全体の管理をするのか?
・何を栽培するのか?
・栽培技術はどうやって習得するのか?
・どこに販売するのか?
・収支は合うのか?
やはり、農地を紹介する側の立場からすると、農地を紹介しても継続できずに荒れてしまうようなことは避けたいところ。つまり、納得のできる計画をしっかりと準備する必要があるのである。
一方で、そもそも信頼関係が出来ている知人の地権者がいるようであれば、こうした縁故を活用するのが最も効率的とも言える。ただし、先に述べた農地の各種条件については、冷静に判断した方がよいだろう。
地域や農地は
大切なパートナーと考える
後継者が不足している地域で、農業が発展すれば、そこに人が集まり、経済的な効果も見込めるかも知れない。それは、地域にとっても大きなメリットとなるだろう。
だからこそ、「農地が確保できればどこでもよい」という考えではなく、地域や農地を大切なパートナーと考え、自分たちの事業を成功させるために必要な条件をしっかり整理し、そのうえで、決めたからには、その地域と共に成長・発展していくことをやり遂げる覚悟で臨んで欲しい。
プロフィール
山田 浩太
2001年(株)船井総合研究所に入社。農業・食品リサイクル分野のコンサルティング、企業の農業参入コンサルティングに従事。2012年に農業参入し、アルファイノベーション株式会社(農業法人)、NPO法人めぐみの里(障がい者就労継続支援施設)、株式会社アグリジョイン(青果卸)にて独自の農福連携モデルと産直取引ネットワークを構築し、約10haのネギ生産を行っている。