新規就農からブランド野菜栽培へ! 徳島県4Hクラブ会長が語る、これからのクラブ活動の形とは
2020/02/17
徳島県は、温暖な気候に恵まれており、冬場も比較的暖かく、特色ある農業が営まれているが、県内の農家はさまざまな課題と向き合っているという。「徳島県4Hクラブ」の会長・佐野健志さんに現状などをうかがった。
メイン画像:「徳島県農業青年クラブ連絡協議会(以下、「徳島県4Hクラブ」)」の会長・佐野健志さん
徳島県は温暖な気候のもと、春ニンジンやブランド野菜の「なると金時」などが盛んに栽培されている。
祖父が残した畑を引き継ぎ
新規就農へ
佐野健志さんが暮らすのは、徳島県の東部に位置する藍住町。徳島平野を流れる吉野川の下流にあたる、平地が多い地域だ。ここで徳島県の特産物である、春ニンジンを中心に栽培する佐野さんが就農したのは、2012年のこと。就農するまでの経緯を、佐野さんはこう振り返る。
「愛知県名古屋市で、大学と大学院時代を過ごしました。卒業後は一般企業に就職するつもりだったので、就職活動を行い、農業関係の企業から内定をもらったんです。でも、最終的に地元の藍住町で就農することに決めました。祖父が所有していた畑を継ぐ人がいなかったから、というのも理由の一つですが、自身の手で農業にじっくりと取り組んでみたいと思ったんです」。
助成金を受けたり、4Hクラブのメンバーからアドバイスをもらったりと、積極的に周囲からのサポートを得た結果、就農から数年で安定的な生産ができるようになったという。
春ニンジンの畑の様子。12月頃に撮影
しかしその後も、経営上の課題に直面することに。佐野さんが手がける春ニンジンは、11月〜翌年の2月にかけての種まきを経て、3月〜5月に収穫時期を迎える品種だ。種まきから収穫までには、およそ3ヶ月の期間があり、その間は従業員の仕事がなくなってしまう。この空白の期間を埋めるため、佐野さんは数年前より、白ネギの栽培を始めたという。
「地域の有志と協力し、『愛住ねぎ』というブランド野菜を作りました。普通のネギよりも丈が短いですが、甘くてとろけるような味わいが楽しめます。なにより、春ニンジンの栽培に影響を及ぼすことなく作れる点がいいですね」。
公共的団体も巻き込み
充実した研修を実現
冬場は多種多様な品目が生産・出荷されるが、夏を迎えると出荷できる品目数が落ち込むのが、徳島県の農業の特徴だ。「徳島県4Hクラブ」のメンバーにも、夏場に出荷できる品目を増やそうと、さまざまな試みを行っている農家がいるという。特にユニークなのは、食用の藍を栽培している農家だ。
「徳島県の伝統文化に藍染があり、県内では藍が盛んに栽培されています。染料としての藍には馴染みがありますが、食用の藍は目新しいと思うので、注目していますね。手探りながらも、着実に栽培と販路開発を進めているようです」と、佐野さん。すでに、藍入りのクッキーや飴などが市場に出回っているようだ。
「徳島県4Hクラブ」では、定例会も積極的に開催されている。また、定例会に「中国四国農政局」や「農業協同組合」、「日本政府金融公庫」といった公共的団体の職員を招き、意見を交換することもあるという。彼らと意見を交換することのメリットを、佐野さんはこう語る。
「新規就農者を中心とする農家への、手厚いサポートが叶いやすくなると思います。俯瞰で農業界や農業経営を見たうえでの意見は、やはりためになりますから。また、新規就農者の声が公共的団体の職員に届いた結果、より実用的な研修が企画・開催された例もあります」。
新規就農者より、「機械のメンテナンスの仕方がわからない」、「買った機械がすぐに壊れてしまった」という声が挙がったのをきっかけに、「農業協同組合」が主導してのメンテナンス講習会が開催されたこともあるのだとか。
活動を充実させる一方、メンバーそれぞれのプライベートを重視するのが、佐野さんや副会長のスタンスだ。
「『4Hクラブ』のメンバーのなかに、今年子供を授かった人が複数人います。そういったことも鑑みて、今年度の活動テーマは『家庭と4Hクラブの活動の両立』に決めました。不必要と思われる会議はカットしたり、飲み会に参加しなくてもいい雰囲気づくりをしています。メリハリをつけて活動に取り組んでいきたいですね」。
PROFILE
佐野健志さん
1987年徳島県生まれ。愛知県名古屋市内にある農業大学・大学院で学んだのち、2012年に新規就農を果たした。2013年に「徳島県農業青年クラブ連絡協議会」に所属し、2019年6月に同クラブの会長に就任。趣味は料理。
DATA
Text:Yoshiko Ogata