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農業業界での最大のイッシューは人材! 農業で働く人をどう確保し、いかに育成する?

高齢化の進む社会で、“人材育成”は大きな課題だ。若者たちの高い離職率や技能実習生の受け入れ、社員の独立など様々な問題が農業分野に限らず直面していることはいうまでもない。そして、2月14日、東京都内で女性農業者が集まる会で人材育成について議論が交わされた。

人材育成は待ったなし

2月14日、東京都内で女性農業者が集まる会があった。いずれも農業法人の経営に携わったり、社員として勤務したりしている女性たちだ。この日のテーマは人材育成。法人内で、総務や労務管理に関わることが多い女性農業者にとって人材育成は喫緊の課題だ。

主催したのは、日本農業法人協会に加入している女性農業者で組織する「やまと凜々アグリネット」。

最初に、養豚経営をおこなうセブンフーズ(株)(熊本県)の前田佳良子社長が事例報告をした。有能な女性社員が大量に退職したことを契機に、時間短縮制度を始め、働きやすい環境づくりに乗りだしたこと、従業員満足度調査を定期的に実施し、人材育成施策の参考にしていることなどを発表した。また、農研機構の澤田守氏は、人材を定着させるための施策と改善ツールについて話した。

その後、筑波大学の納口るり子教授がコーディネータ役となり、各参加者からの発表をまとめ、人材の確保や育成の上で課題となっている点を挙げた。「皆さんはどう解決している?」「うちではこうしている」など互いに悩みや解決策を出し合う双方向の議論がおこなわれた。



多様な人材を活用

納口教授は、参加者から出された課題を6点にまとめた。

具体的には「若い人材をどう確保し、どう育てるか」「パート従業員とのつきあい方」「外国人材の活用方法」「生産現場で働く女性社員へのケア」「社員の独立をどうとらえるか」「経営の多角化とコミュニケーションの円滑化」。

参加者が生産している作物や経営規模はさまざまだが、多くの法人が正社員とパート、外国人材を組み合わせながら人材を活用している。ただ、正社員と外国人材では募集の仕方が異なり、正社員とパートでは育成方法も異なる。農業に限った話ではないが、若者たちが終身雇用を念頭においておらず、合わないと思えば容易に辞めてしまい、離職率も高い。参加者1人1人の発言から、戦力となってくれる人材をどう確保し、育てていくのかが切実な課題となっていることがひしひしと伝わってきた。

外国人材登用にはリスクも

話題が外国人材に移ると、さらに議論は盛り上がった。この日参加した15法人のうち、技能実習生などを受け入れている人は7法人。高度な知識や技能を有する高度人材を受け入れている法人もある。高度人材は正社員として日本人と同様の待遇を受ける。

「外国人材なしでは、経営が成り立たない」という話が出る一方、そのリスクに対する懸念の声も聞かれた。「中国から来日するはずだった技能実習生が新型コロナウィルスの感染拡大の影響で来日延期を余儀なくされた」と語る人もいた。外国人材が世界各国で奪い合いになっており、賃金も上昇傾向にある。「農産物の価格が上がらない中、高い賃金を払って外国人材を受け入れても、収益確保につながらないのでは」と指摘する参加者もいた。

一方、外国人材を仕事面から生活面まできめ細かくケアする法人もある。自ら「母親的存在」となって、かいがいしく面倒みている女性農業者の話も披露され、参加者はうなずきながら聞いていた。



社員の独立をどうとらえる?

さらに、法人に一定年数勤めた後、独立していく社員についても話題が盛り上がった。思いのほか多くの参加者が「育てた社員が独立していく」と発言した。

なかには、「将来の幹部候補と期待していたが独立していった。長く勤めてくれる社員をどう育てればいいか」と吐露する声も聞かれた。これに対し「独立志向の高い人は、早く覚えようと懸命に仕事をする。そういう社員がいてくれて幸運だと思ったほうがいい」と叱咤激励する意見も出た。その通りかもしれない。声高に高齢化が叫ばれているなか、独立を志向して飛び込んでくる骨太の若者たちいるということは、農業という産業が魅力を放っていることにほかならない。

4時間という時間内ではおおよそ議論を尽くすことができなかった。それほど人材は農業界での大きなイッシューとなっている。それでも、「人手が足らない」と手をこまねくのではなく、多様な人材を果敢に登用している法人のたくましい行動力が浮かび上がる一時だった。

PROFILE

農業ジャーナリスト

青山浩子


愛知県生まれ。1986年京都外国語大学卒業。1999年より農業関係のジャーナリストとして活動中。2019年筑波大学生命環境科学研究科修了(農学博士)。農業関連の月刊誌、新聞などに連載。著書に「強い農業をつくる」「『農』が変える食ビジネス」(いずれも日本経済新聞出版社)「2025年日本の農業ビジネス」(講談社現代新書)など。現在、日本農業法人協会理事、農政ジャーナリストの会幹事などをつとめる。2018年より新潟食料農業大学非常勤講師。

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