ある気づきで病害虫の発生をゼロに! 草と共に育てる“自然栽培茶”とは
2020/05/04
日本一のお茶処として知られる静岡県に、自然栽培を行う茶園がある。それを実現させたのは、長年培った栽培ノウハウと、一台の草刈機のようだ。
メイン画像:一本仕立ての茶畑は日光や風が茶畑全体に行き渡る。だから根が深くまで張り、幹も太くなり、病害虫が発生しづらい。そして新茶時期には、プチプチとした元気の良い新芽が伸びてくれる。
雑草と共に生きる
自然栽培に
静岡県静岡市と浜松市のほぼ中央に位置する牧之原台地は日本有数のお茶処だ。同地で三代にわたってお茶農家を営んでいるのが杉本園。三代目の杉本鋭悟さんにお話をうかがった。
「当園では父の代で減農薬・有機栽培に挑戦して、無農薬・有機栽培を経て、2014年からは全ての畑を有機肥料も入れない、雑草と共に生きる自然栽培に切り替えました。野ウサギやカモシカまでもがやってくる長閑な茶園ですよ」。
杉本園のお茶は、昨年OPENした「OREC greenlab 福岡」でも提供されている。「自然栽培では、成長は少し遅れますが、葉が柔らかい新茶期間が長くなります。美味しいお茶を、適価でいつまでも提供したいです」(杉本さん)。
杉本園の自然栽培には、確かな技術的裏付けがある。その象徴が一本仕立てだ。
「お茶の木は主幹が縦に育つだけでなく横方向にも枝を伸ばします。この横枝は地面に接する部分から根を張る。だからお茶の木は横方向にも膨らむのが一般的です。ところがある年、茶毒蛾の被害に悩まされて……その時、被害を受けているのが、この横枝だけだということに気付いたんです。
以来、10年ほどかけて横枝を生やさない一本仕立てに切り替えました。その結果、病害虫の発生が激減して、数年後には根が深くまで張り、幹も太くなると、病害虫は全く発生しなくなりました」。
杉本園の自然栽培を支える
草刈機の存在
ところが今度は東日本大震災が発生。肥料に含まれる放射性物質に悩まされた。
「その時、ちょうど、一本仕立てにした茶畑に雑草が生えていて、思い切って自然栽培を志しました。それまでは、作物が栄養を求めている時に肥料を与えて吸収させる栽培方法を行っていました。ところが適期というのは根を伸ばす時。そのタイミングで肥料を与えると、根はそこで成長をストップさせてしまう。そこで施肥をやめて雑草を活かすことにしたのです。これが正解でした。
当園の土はpH値が中性に近く、多くの雑草が生えてきます。この雑草が夏の暑い時期には補水、冬の寒い時期には保温をしてくれる。一本仕立ての茶樹の幹は太く、根も深くまで伸びているため、自ら栄養を探してくれます。
自然環境に極めて近い場所では、害虫は大量発生しません。だから消毒も必要ありません。カモシカが来ることがありますが、お茶よりも雑草の新芽が好みなようで、お茶には見向きもしないんです」と満面の笑顔だ。杉本園の自然栽培を陰から支えているのは、オーレックの草刈機『ブルモアー』なのだとか。
杉本園では、長い雑草、小笹まで細かく粉砕できるオーレックのBULL MOWER(ブルモアー)を使用。「雑草は生えている間は土を守り、最後は肥料になってくれます」(杉本さん)。
「長い雑草はもちろん、小笹までも細かく粉砕してくれます。それまでは普通の草刈機を使っていたのですが、『ブルモアー』に変えたら雑草が元気になりました。根っこは残して表面だけ刈るからです。刈った雑草はフカフカの土になり次の雑草を育てる……こんな自然栽培ができるのも『ブルモアー』のお陰です」。
DATA
問い合わせ
TEL:0943-32-5002
文:川島礼二郎
AGRI JOURNAL vol.15(2020年春号)より転載
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