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若手リーダーに聞く! withコロナ・ネットの影響で日本の農業はこれからどうなる?

【インタビュー前編】人々の生活を大きく揺るがした新型コロナウイルス。その反動で、インターネットを使った各種サービスの需要がより高まっている。若手リーダー3名が「新型コロナ」「ネット」をキーワードに、農業の現状と未来について語り合った。

対談メンバー

JA全青協会長 田中圭介さん
農林水産省 渡辺一行さん
4Hクラブ会長 首藤元嘉さん


 

日本の農業は
これからどうなる?

新型コロナという未知のウイルスの蔓延、緊急事態宣言、「第3波」の到来、そして変異種の出現……。2019年冬に新型コロナウイルスが確認されてから状況は目まぐるしく変化し、それに合わせて生活様式も変化していった。

人々の間で外食や観光の機会が大きく失われ、さらには“おうち時間”が増加したことで、ヒト・モノの流れも激変している。人々の生活の基盤であり、レジャーを支える分野である農業にも、様々な影響がもたらされている。

本記事に登場するのは、農業界を率いる3名の若手リーダーたち。それぞれの目線から、現在の農業界における動向、インターネットの活用方法、そして今後の心構えまで、率直に語ってくれた。

「新型コロナが与えた影響を足がかりに、新たに学んだこともありました。そうした“学び”を広く共有しつつ、全国の若手農家さんと手を取り合って進んでいければ」とは、対談の冒頭、農水省・渡辺一行さんが紡いだ言葉。三者による対談は、農業の未来をより良い方向へ導くきっかけとなるはずだ。



コロナを機に
農業はどう変わった?

田中 新型コロナの感染が拡大した結果、そのあおりを受ける農家が続出しました。例えば、日本へやってくる外国人観光客の数が激減したために、観光果樹園は大打撃を受けています。また、入学式や卒業式といったイベントが相次いで中止になったことで装花の需要が減り、花きを手がける農家は大きな収益減に直面しました。

首藤 たしかに、流行が始まった昨年春ごろは、マイナスな影響を受ける農家の存在が目立っていました。新型コロナが農家に与えた影響を把握するため、4Hクラブ内でアンケートを実施したところ、およそ6割の農家が「JAに出荷する生産物の量が減った」と回答しています。

しかし、夏ごろからこの状況にたくましく立ち向かう農家の存在も見受けられるようになりました。コロナが流行する前より、売り上げを伸ばした農家も多くいるようです。

田中 そうですね。農産物直売所のような販売店のなかには、売り上げを大きく伸ばしたところもあります。

首藤 実はうちも、売り上げが伸びた事業所の一つです。新型コロナの感染が広がり、外食を控える人が増加した頃から、自社で生産している米と加工品の双方が早々に売り切れるようになりました。

この背景には、「家庭での『食』を充実させたい」という新たなニーズがあると思います。外食の機会が減ったことで、「せめて家ではより良質なものを食べたい」と考える人が増えたのではないでしょうか。弊社と同じように自然栽培に取り組んでいる農家に聞くと、誰もが“生産物が完売した”と話しますね。

ネット通販への
見解は?

渡辺 消費動向が変わり、従来の販路での販売数が落ち込んだことを受け、新たな販路を模索している方が増えています。また、新たな販路として、ネット上での販売を始めた方、あるいは検討している方も多くいると思います。首藤さんと田中さんは、ネット販売に対して、どのような所感をお持ちでしょう?

首藤 ネット通販の市場は、大きく盛り上がっていると感じます。

田中 そうですね、ネット通販がとても盛んになってきたと肌身で感じています。

首藤 ただ、ネットで生産物を売る場合でも、対面で販売する場合でも、消費者とのコミュニケーションが大切である点は、変わらないと感じています。商品を注文してくださった方に送る確認メール一つにしても、工夫次第では気遣いを感じさせることができますよね。

弊社でもネット通販を行っていますが、きめ細やかな対応を心がけることで、消費者の方に喜んでいただけるケースが多いです。ネットでのコミュニケーションであっても確実に気持ちを伝えられるという面を考慮すると、対面での販売とネット通販の間には、ギャップがなくなってきていると感じます

渡辺 「ネット上だとコミュニケーションが不十分になりがち」といった概念が薄れてきているということですね。 

農林水産省でも、「#元気いただきますプロジェクト」というネット通販に取り組む方々を支援するプロジェクトを実施しています。こうした支援策もぜひ活用していただきたいですね。

ネット販売の支援制度を知ろう
#元気いただきますプロジェクト」という名のもと、「国産農林水産物等販売促進緊急対策」が実施されている。
プロジェクトの一環である「インターネット販売推進事業」として、指定のECサイトで販売を行う際の送料を支援する取り組みが行われている。
出品を希望する人は、農水省のHPより指定のECサイトをチェック!

『コロナを機に変わったこと・ネット通販への思い』を聞いたインタビューは後編に続く



SPEAKERS

JA全青協会長

田中圭介さん


福岡県久留米市にて、家族経営でサニー・リーフレタスや白菜などを生産している。2020年5月にJA全青協会長に就任。


農林水産省

渡辺一行さん


大臣官房政策課・国産農林水産物等販売促進チームの企画官。直近では「#元気いただきますプロジェクト」の企画などを担当。


4Hクラブ会長

首藤元嘉さん


愛媛県西条市を拠点とする「株式会社 維里(土と暮らす)」の代表として、有機米などを手がける。2019年7月に4Hクラブ会長に就任。


文:緒方佳子
絵:堀千里

※当記事に掲載されている原稿は「AGRI EXPO ONLINE」で公開されている三者の対談内容を編集・加筆したものです

AGRI JOURNAL vol.18(2021年冬号)より転載

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