不耕起栽培の大事なポイントは? パタゴニアのワークウェアが寄り添う、小さな農園の取り組み
2022/11/16
脱炭素社会の実現に向けて、農地の炭素貯留に注目が集まっている。中でも土壌環境を壊さない不耕起栽培はCO2削減効果の期待が高い。豊かな生態系を作り出すことで生命力の強い野菜を育む、不耕起栽培の実践者を訪ねた。
不耕起が育む、元気な野菜
海外の先進的なメソッドを参考に
畑に一歩入ると、ふわふわの土に足を取られて驚く。9年前から不耕起栽培をする北海道の八雲山水自然農園の土は、それほど軟らかい。
「ミミズや微生物など、土を豊かにする生物はつながり合って働きます。耕せばコロニーを壊し、団粒化を崩す。大切なのは自然の循環や均衡を保つこと」と大林 誠さん。
健やかな土で育つ野菜は生命力が強いから病害虫に負けず、味も濃くおいしいと全国にファンがいる。販売はSNSや農園サイトのオンラインが主だ。特にトマト、ミョウガ、ニンニク、カボチャ、スイートコーンが人気で、毎年の出荷を楽しみに待つ人も多い。
自然と共生するリジェネラティブ・オーガニック農法、その代表的管理のひとつが不耕起だ。
耕さないので植物が光合成の過程で土中に固定した炭素が放たれず、炭素貯留の多さでも注目される。トラクターなど大型機械を使うことによるデメリット、湿害や干ばつ害を受けやすい耕盤層ができる心配もない。
「海外の先進的なメソッドを積極的に使っています。不耕起=放置だと思われることもありますが、まったく違います(笑)」。
例えば作物残渣で地面を覆い水分を保つ。乾いた表土からは微生物が失われ、ミミズの活動も鈍るからだ。雑草もすべて放置するわけではない。作物が小さなうちは抜き、雑草に負けない大きさに育ってからは放っておく。
作物だけでなく土や虫、雑草までも毎日よく観察することで、何が起きているか、どんな手助けをしてあげればよいのかを知ることができるという。施肥が必要だと感じたときは、作物残渣や山野草を発酵させてつくった肥料を与えることもある。
農園の生態系が多様になる
少数多品目と不耕起による土づくり
また、農園という生態系が多様なほど元気な野菜が育つという。「夫婦で営む、1・4haの北海道にしては小さな農園ですが、作物は100種類」もあり、畝間に在来種の山野草も植えてある。
無農薬だから虫も多いが、多様であれば捕食しあって害虫のみが増えることもない。さらに多品目には病害虫で育たなかった作物があっても、他の種類が収穫できるメリットも。
「自然からもらうだけでなく、回復の手助けをする。一般的な耕起栽培より手間は掛かりますが、自然と調和することで生命力の強い野菜を育て、人々の健康な心と体をつくりたい。私自身、自然の一部になって働くのは、とにかく楽しい」。
自家採種だから
その土地に順応した野菜に
奥様の惠婷(フェイティン)さんも「いつも畑にいる」と笑うほど、日々、ワクワクや新たな発見をくれる農業が好きだという。
とはいえ、不耕起栽培で安定した収量が出せるまでの道は決して平坦ではなかったそうだ。
不耕起栽培で挑む完全無農薬、無化学肥料。そしてもうひとつのこだわりが自家採種だ。
「大林誠さんが農業を学んだ北海道札幌市小別沢(現在は仁木町)にあった『まほろば自然農園』を独立するとき、ひととおりの野菜の種をいただきました。20年くらいかけて採ってきた種だから、バトンを受け継いだ気がしています」。
八雲の環境に適応させながら、ようやく自分達らしい野菜になってきたのは最近だという。遺伝的にも多様であるほうが環境適応性が高いと考えているため、同じトマトでもいちばん優秀な株1本に絞らず、個性的な5本くらいの株の種を採ってきた。
カメラが好きな惠婷さんの写真も添えて、大切な種をファイリングしている。ファイルされた種は、どんな植物のもので、どう育って来たかということを共有できるための資料になる。
自園の生態系だけでなく、
地域全体の自然に心を配る
八雲山水自然農園では売り上げの一部を北海道の環境保護団体「流域の自然を考えるネットワーク」に寄付している。自園の生態系だけでなく、地域の環境にも配慮してこそ、自然と共生する野菜づくりができると考えるからだ。
「北海道の豊かな生命を育む川の生態系を考え、河川流域の保護策を提言している団体です。災害を防ぐはずだった治山ダムや砂防ダムが逆に川岸や山を崩してしまい、川の生き物にも異変が起きていることに警鐘を鳴らしています。河川の調査などにも時々、参加させてもらっています」。
また、小学校や町民講座に出向いて、農業や食育についての講座を開いてきたという。「給食の食べ残しが多いことが問題視されて、出前授業をするようになりました。理解し合うためには、私も子供たちの気持ちを知らなければいけない。有機野菜についてどう思うかなど、テーマを決めて自由に発言し合う場にしています」。
自然のサイクルや均衡を壊さない、農法は地域にも無関心では続けられない。かといって負担になるほどは気負いすぎず、自分の手が届く範囲で環境の保全や再生の手助けも続けていくそうだ。
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環境への悪影響を抑える素材を使った、
非常に丈夫で快適なパタゴニアのワークウェア
自然のサイクルや均衡を壊さない野菜づくりに挑んでいるからこそワークウェアもサスティナブルでありたい――。そう話す大林さんが愛用するのが、パタゴニアのワークウェア。
普段の畑作業で愛用されている、これからの季節におすすめのアイテムがこちら!
■パタゴニア
メンズ・アイアン・フォージ・ヘンプ・キャンバス・ビブオーバーオール
¥20,350(税込)
肥料や水をあまり必要とせず、土壌環境を改善させる環境性を備えた作物がヘンプ。繊維としても強度や通気性、防臭に優れていてワークウェアに最適だ。「デニムなどより驚くほど軽く、洗濯でも乾きやすいのにタフな素材。枝が刺さるような作業でも破けず安全だし、摩耗も少ない」と大林さん。フィット感を調整できて動きやすいオーバーオールは、ポケットも複数あり収納力も高い。
■パタゴニア
メンズ・ロングスリーブ・ワーク・ポケット・Tシャツ
¥6,600(税込)
重労働に耐える丈夫で快適なポケット付きの長袖Tシャツ。手袋の下に容易にフィットするリブニットの袖口も特徴だ。「ヘンプ55%の生地ですが、とても柔らかく通気性も良いので気づくといつも着ているほど重宝しています」(大林さん)。
■パタゴニア
メンズ・スティール・フォージ・パフ・ジャケット
¥35,200(税込)
耐摩耗性に優れ、格別な保温性が特徴のジャケット。「北海道の冬でも暖かく、着心地が軽いので動きやすく作業に集中出来ます。多少の雨や雪でも濡れることなく気にならず、デザイン性も高いので寒い時期は仕事着としても普段着としても良く着ています」と大林さん。ハンドウォーマーポケットやしっかりと締めることができるフードなど、機能性も優れている。
PROFILE
八雲山水自然農園
大林 誠さん、范 惠婷(ハン・フェイティン)さん
北海道八雲町で不耕起、無農薬の栽培に取り組む。安全に健やかに育った野菜は、新規客の予約が難しいほど人気だ。
問い合わせ
フリーコール:0800-8887-447
携帯電話・IP電話:045-435-6100
Sponsored by パタゴニア日本支社
文:時津木春
写真:佐藤裕美