世界初! 光合成をリアルタイムで計測する「光合成計測システム」は何が凄い?
2020/01/24
"見える化"といえば、そのターゲットは環境情報だ。ところが昨年、愛媛大学などが光合成の状態を計測できる技術を世界で初めて開発した。その仕組みと狙いについて紹介しよう。
植物の光合成を計測
その仕組みは?
施設園芸で収量増を目指す生産者の多くが、ハウス内環境の見える化に取り組んでいることと思う。ハウス内の温度、湿度、照度、CO2濃度といった情報をセンサーで取得し適切に管理することで、作物にとって快適な環境にしよう、という取り組みである。
もちろんそれは有用なのだが、一方で「この環境が植物にとって最適なのだろうか?」と考えたことはないだろうか?
植物がどれだけ光合成をしているのかをリアルタイムで知りたい……それを実現するのが、愛媛大学植物工場研究センター・豊橋技術科学大学エレクトロニクス先端融合研究所の高山弘太郎教授(植物診断計測工学)を中心としたチームが開発した『光合成計測システム』だ。開発は高山教授(豊橋技術科学大学・愛媛大学)のほか、ベンチャー企業のPLANT DATA社、それに協和が共同で行った。
今更ながら、光合成とは、植物や植物プランクトン、それに藻類といった光合成色素を持つ生物が行う生化学反応のこと。簡単に言えば、光を利用して、水と二酸化炭素から炭水化物を合成すること、それが光合成である。だから、光合成を行えば、空気中の二酸化炭素濃度は下がる。
『光合成計測システム』では、光合成量を二酸化炭素濃度の差として測定する。その仕組みは至ってシンプルだ。底側が開いた透明のフィルムでハウス内の特定個体を覆う。フィルムの内側上部にファンを設置して内部に気流を発生させる。そのうえで、CO2センサーでフィルム内外のCO2濃度差を計測する、というもの。同時にH2Oも測定することで蒸散速度も計測できる。
環境制御の効果が出ているか
チェックができるようになる
『光合成計測システム』を開発した狙いが興味深い。
高山教授は、「ハウス内環境の見える化は大切です。ですが、環境制御を行った結果、植物の生育状態がどうなっているのか?その見極めは生産者にゆだねられています。
端的に言えば、生産者の目による観察と経験に基づいて判断されているのです。これでは、せっかく環境制御システムを導入しても、それが上手く運用できているかどうか判断するのが難しい。環境制御した結果を、光合成量として見える化して初めて、環境制御の効果が分かるのです」と語った。
本システムは、2019年9月にPLANT DATAより市販が開始されている。ハウス内環境は見える化したものの、どう運用したら良いのか分からない、という方に適したサービスと言えよう。
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Text:Reijiro Kawasihma