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「兼業」と「住民参加」が、地方創生のキーワード?

地方創生を実現するためは、地域住民の参加が不可欠である。特に農業分野では住民が意思決定に参加することが大切だ。そんな農業と地方創生のつながりを、元・農林水産省 農林水産政策所長で食と農の政策アナリストである武本俊彦氏にお話を伺った。

専業から兼業へ
6次産業化で雇用を創出

そもそも真の意味での地方創生を実現するためには、地域の住民がその意思決定過程に参加し、地域の将来を自ら決定できるシステムであることが重要です。地域の自然条件や歴史などに規定される農業では、特にそうしたプロセスを踏むことが大切になってきます。

これまでは大規模効率化の観点から、肥料や農薬、化石エネルギーを多用して安価な農産物を生産することが推奨されてきました。こうした農業は、需要の増加、物価の上昇局面では理に適った経営モデルだったといえます。

しかし、人口が減少し、価格が下落する状況では、そうはいきません。消費者や実需者のニーズを産地にフィードバックし、ニーズに適った安全・安心でおいしい農産物を生産し、加工した食品を販売していくことが価値をもってきます。

これは、1次産業の農業という専業路線から、リスクを分散する兼業路線に転換することを意味します。別の言い方をすると、農業に加工(2次産業)や販売(3次産業)が加わった、いわゆる6次産業化ですね。このことによって、地域には新たな雇用と所得の機会が生まれてきます。
ここで大切なことは、こうした地域の発展に、地域の人々がしっかりと関わっているかということです。地域の人びとの主体的な取り組みがあってこそ、地方創生は可能になるのです。

エネルギーとの組み合わせで
農産物を差別化

パリ協定の批准などから、消費者の地球温暖化への関心が高まっています。農産物や食品についても、化石燃料ではなく、地球環境に配慮した生産が求められてくるでしょうし、ビジネスとして考えると商品の差別化に該当します。

例えば、太陽光パネルを農地の上部空間や調整池に設置し、固定価格買取制度を通じて売電収入を確保するとともに、化石エネルギーに依存しない農産物として、商品の差別化を図る。こうした取り組みは、大いに推奨していくべきものと考えます。

ソーラーシェアリング普及に
さらなる改革を

たしかに農山漁村での再生可能エネルギーを推進する法律も作っていますし、農業をやりながら太陽光発電を行うソーラーシェアリング(営農型ソーラー)についても、2013年の農地法の運用改善によって、3年ごとの許可を前提に設置が可能になっています。

しかし、3年ごとの許可では、銀行からの長期資金の借り入れが難しい状況です。ソーラーシェアリングは、食料生産と再生可能エネルギーとの両立を図ることで、農村地域の発展にも貢献し得るものです。農水省には、もう一段の改革を期待したいですね。

真の地方創生は
住民主体で行う

地方創生は、ローカルアベノミクスの切り札として鳴り物入りで登場しました。しかし、最近はあまり聞こえてきません。なぜでしょうか。

1つには、地方創生は、2015年4月の統一地方選対策として登場したからです。2014年12 月の総選挙とともに2015年4月の統一地方選は、自民党が勝利しました。その結果として、安倍政権における政策のプライオリティが、地方創生から一億総活躍に移っていったことが挙げられます。

もう1つは、各自治体の総合戦略は、国の定めた「長期ビジョン」と「総合戦略」に基づいて策定することとされたのですが、予算や策定期間の制約から、地域住民の声を丁寧に拾い上げることもなくトップダウン型方法がとられたことによります。これでは、地域住民のあいだに〝自ら作った戦略〞という意識を醸成することは不可能でしょう。

真の意味での地方創生は、国の示したビジョンの焼き直しではできません。地域の雇用と所得を確保するために、地域の発展ビジョンはどのような方向が望ましいのかを地域の人々が十分に話し合い、いわば自分たちのビジョンに仕上げていくことが重要なのです。


食と農の政策アナリスト(元・農林水産省 農林水産政策研所長)
武本俊彦さん

1976年農林水産省に入省。内閣官房内閣審議官、農林水産政策研所長などを経て、2013年3月退官。現在、野村アグリプランニング&アドバイザリー株式会社 顧問、環境エネルギー政策研究所 シニア・フェローなど。


文/Kiminori Hiromachi

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