成功する農業! 受託給食業×循環型農業【参入事例】
2017/09/29
異業種からの農業参入において、本業とのシナジーを上手く活用した事例を紹介する。栃木県で受託給食業を展開する株式会社日本栄養給食協会は、独自の「食循環ネットワーク」を構築し、農業分野における新たな可能性を見出している。
シナジー活かし
給食事業から農業参入
株式会社日本栄養給食協会は、受託給食業という本業を活かし、2010年「育(そだつ)くんファーム」を設立し、農業に参入。約40反の農場で、大根、人参、白菜、キャベツ、ネギ、トウモロコシ、サツマイモなど、年間を通じて様々な農産物を生産している。自社で栽培した野菜を給食事業等で利用することで、自社内で需要と供給を行うしくみだ。
また、2014年、障がい者の就労継続支援事業に新規参入。「NPO法人ひとつの花」を設立し、一般就労を目指す障がい者の方々を中心に、サポートを行っている。利用者は「育くんファーム」の現場職員と一緒に、農作業、洗浄・選別・梱包の作業等に取り組んでいる。ここでは、雇用の創出と利用者への就労支援、労働力の確保という歯車が回っている。
さらに、2010年、「育くんファーム」設立と時を同じくして、食品リサイクル事業に参入。給食事業で排出される食品残渣を中心に、有機液体肥料化。ここで作られた肥料は「育くんファーム」で利用する。
独自に生み出した
食循環ネットワーク
「育くんファーム」で、障がい者の方と一緒に野菜を生産
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生産した野菜を、もともとの本業である給食に使用
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給食残渣はリサイクルし「育くんファーム」の肥料に!
食品残渣を肥料に変えることでゴミを減らすなどの環境に配慮した取り組み、および、食品ループを軸にした環境問題への取り組みが評価され、平成26年度の「環境・循環型社会・生物多様性白書」に取り上げられた。
成功の秘訣は?
現在(2017年9月時点)、日本栄養給食協会グループとしての取り組みは、先に挙げた給食事業、農業、障がい者の就労継続支援、食品リサイクル事業のほか、ベーカリー事業、豆腐製造、餃子製造、と多岐にわたっている。
これら全ての事業は、代表の橋本社長が掲げる『食を通じて、健康に寄与し、文化を創造する』という理念のもとに拡大してきたものだ。
また、幼稚園等での食育活動や地域イベントにも積極的に参加し、地域の食文化振興に貢献している。2011年に開催された「地産地消給食等メニューコンテスト」では、農林水産省の生産局長賞を受賞し、同年の「食育白書」に掲載された。
同グループにとって、「農業」は単なる農業参入ではなく、地域の方々と密接に関わりつつ、地域文化の発展に寄与する取り組み全体を意味しているのだ。
シナジーを活かし、様々な角度から複数の事業を展開しながらも、一つの理念を具現化していることが、食循環ネットワークを作り出した要因であり、事業拡大の秘訣なのかもしれない。
アルファイノベーション株式会社 山田 浩太
2001年(株)船井総合研究所に入社。農業・食品リサイクル分野のコンサルティング、企業の農業参入コンサルティングに従事。2012年に農業参入し、アルファイノベーション株式会社(農業法人)、NPO法人めぐみの里(障がい者就労継続支援施設)、株式会社アグリジョイン(青果卸)にて独自の農福連携モデルと産直取引ネットワークを構築し、約9haのネギ生産を行っている。
アルファイノベーション株式会社