注目キーワード

最新技術

潅水制御が不要で高糖度トマトが育つ! ヤンマーが開発した“自然給水”の栽培装置

「潅水制御をしなくても高糖度トマトを育てることができる!」……そんな夢のような栽培装置をヤンマーが発売した!静岡県三島市の生産者が導入したと聞きつけ、取材に伺った。

トマト栽培で利益を!
自然に給水する栽培装置『NSP』

農業資材や燃料の価格は上昇傾向にある一方、それを農作物価格に転嫁するのは容易ではない。とはいっても急激に大規模化することはできない…。だが、諦めないで欲しい。トマト栽培で利益を出すための製品をヤンマーグリーンシステムが発売している。それが『NSP(自然給水装置)』。植物の蒸散に合わせて自然に給水できるため潅水タイミング・量の設定が不要という画期的な栽培装置だ。

『NSP』の発売は2019年。当初は水位センサーや配電盤が必要な大規模生産者向けの仕様のみであったが、シンプルかつ中小規模生産者に向けた新仕様を『NS-2』として2022年に追加発売した。『NS-2』は中小規模向け製品のため、新規就農者や水稲育苗ハウスの有効活用にトマトを始めたい、という方に適している。

そんな『NSP』の『NS-2』を導入したのが静岡県三島市の新規就農者、川口誠介さん。2022年に新規就農を果たしたばかりのトマト生産者だ。

「他の栽培装置と比べて、潅水管理が不要であり導入コストにもメリットを感じたので、『NS-2』に決めました」(川口さん)。


2022年に新規就農を果たした川口誠介さん。「高付加価値のトマトで利益を上げて、将来は自分のトマトを食材に使ったデリバリー店を始めるのが目標」と話す。

『NSP』は根域制限栽培と組み合わせて使用する。一般的に高糖度トマトはストレスを掛け(潅水量を制限して)栽培するが『NSP』は根域を制限する。そのため、植物が欲するだけ給水しても高糖度トマトができる。

「定植が12月下旬でしたので、今ようやく1段目が採れ始めたところですが、物凄く甘いんですよ」と、川口さん。『小鈴キング』と『ラブリーさくら』を試食させていただいたが、1段目とは思えぬ甘さに驚かされた。


川口さんが『NS-2』で育てたミニトマトは驚くほど甘い! ヤンマーグリーンシステムによると下段でも平均糖度7.8を達成しているというから、今後は高糖度トマトの基準となる糖度8に達するはずだ。

「地上には環境制御を入れていますし遠隔操作も可能ですから、潅水まで自動化すれば、私は栽培管理や営業活動に力を入れられます。高糖度トマトとして出荷できれば付加価値が出せるから利益を出しやすい。1反のハウスで始めましたが、この面積でも充分利益が出せる計算です」(川口さん)。

『NSP』は給水を自動化=省力化できるだけでなく、高付加価値栽培を、誰でも簡単に可能にする。しかも『NS-2』なら販売価格は一般的な養液栽培システムと同程度だ。また、植物に吸われた分だけ給水する仕組みだから、水と肥料の使用量を大幅に削減できる。省資源かつ地球に優しい持続可能な栽培方法でもあるのだ。『NSP』は中小規模から大規模栽培のトマト生産者に対応した、大きな可能性を秘めた給水装置と断言できる。

 

NSP(自然給水装置)
NS-2 ハウス活用・小規模栽培に

『NSP』は根域制限栽培に利用する。作物は800cc程度の培地に植えられており広く根を張ることができない。養液は貯水槽(シルバーシートの内側=発泡素材)に貯められている。作物と養液を繋ぐのは吸水シート。毛管現象により貯水槽の養液を根に届ける仕組みだ。左に見える白い球体はフロート。これが貯水槽の水位を制御する。

<システムの仕組み>


フロート(ボールタップ)が養液の水位を制御する。


植物が蒸散を行うと(図の①)根が培地から水分を吸い上げる(図の②)。すると毛管現象により吸水シートが貯水槽から養液を吸い上げる(図の③)。貯水槽の水位が一定以下になるとフロートが下がり養液タンクから貯水槽に養液が供給される。だから貯水槽の養液量は常に一定に保たれる。

 

他にもいろいろ!
ヤンマーグリーンシステムの
イチオシ施設園芸製品

正確に計測してパック詰めできる
「イチゴスマート選果システム」

X線による重量計測、プロジェクションマッピングといったハイテクを満載した本製品は、イチゴに触れずに正確に計測が可能。しかもパック詰めが誰でも簡単にできる優れモノだ。省スペース設計だから作業環境が向上するメリットも!


イチゴの高温対策に!
「イチゴ断熱送風栽培槽」

イチゴの株元を効率よく温度管理できる栽培槽。株元に配置された通気口から冷温風を直接送風できるため効率的で、CO2局所施用にもオススメ。槽本体は断熱性の高い発泡スチロール製だから、槽内に温度差ができにくく生育ムラを低減する。


人は動かずイチゴが動く
「イチゴ移動栽培装置」

作業時の辛い姿勢から解放してくれる『イチゴ移動栽培装置』は、なんと栽培ベンチが移動するため作業者は移動する必要がなく、定位置ですべての作業が可能になる。株数増と軽労化を両立する画期的なシステムだ。

問い合わせ

ヤンマーグリーンシステム株式会社
TEL:072-789-9219


文:川島礼二郎
写真:水野武士

AGRI JOURNAL vol.27(2023年春号)より転載

Sponsored by ヤンマーグリーンシステム株式会社

関連記事

農業機械&ソリューションLIST

アクセスランキング

  1. 消費者へのアピールに“万田酵素”を活用!? 野菜や果物、米の販売時に専用ラベルで差別化...
  2. イチゴの選果を効率化・省人化する「スマート選果」の最新動向
  3. 軽トラカスタムの新潮流!親しみやすさが人気の『レトロカスタム』
  4. 圃場の均平化を高精度かつ効率的に! FJダイナミクスのレベラーシステムがアップデート...
  5. 20代全体の5割が「将来農業をやってみたい」!? 若者の農業に対する意識を調査。...
  6. 今買えるEV軽トラから特定小型まで! 農業で活躍するモビリティを一挙公開!...
  7. 【植物工場ビジネスの最新動向と課題】現状は赤字が約半数。エネルギー削減の取り組み進む...
  8. コメリの農業用品がお得に買える! 【令和7年度】農業用品WEB予約受付中
  9. 東京オートサロン2024でみつけた、最新の軽トラカスタム一挙公開!
  10. JAが「農業協同組合」であり続けるために 経営危機を乗り越えるためにすべきことは?...

フリーマガジン

「AGRI JOURNAL」

vol.33|¥0
2024/10/09発行

お詫びと訂正