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深谷市長に聞く!農業に若者を呼び込むためのヒント

民間企業と提携して
農業にチャンスをつくる

深谷市では、民間企業と提携した2大プロジェクトが進行している。今までとは違う形やルートで消費者に届けることで、生産物に新たな付加価値をつけるものだ。

地域6次産業化で化学反応を起こす!

深谷市長と有限会社ワールドファーム代表取締役社長の上野裕志氏(2016年12月)

2016年、深谷市は農産物加工の有限会社ワールドファームと農業参入に伴う協定を結んだ。農水省が推進する6次産業化を、地域一体となって具体的に行っていくためのプロジェクトで、特別な地域の特産品をつくるのではなく、毎日食卓に並ぶようなものを加工する。深谷で作られたものを深谷で加工し、埼玉県や首都圏の消費者に届けるという流れを目指しているのだ。

ワールドファームは、従業員の7割以上が20代。このことも、協定を結ぶ決め手となったと市長は言う。

「若手が活躍し、様々な挑戦を行っている企業が市に来ることによって、農業をやっている若者たちにも刺激があるだろうと考えました。お互いに切磋琢磨しながら、化学反応を起こしてくれることを期待しています」。

野菜の大々的なPRが”やりがい”に繋がる

深谷テラスFarm(仮称)イメージイラスト

もう1つのプロジェクトは、現在進行中の関越自動車道花園IC周辺を広域的な交流・連携地点と捉えた「花園IC拠点整備プロジェクト」。民間ゾーンとしてアウトレットモールを誘致するとともに、公共ゾーンを「深谷テラス」と名付け、農業と観光の発信、活動拠点の整備を行い、市内に人を呼び込む仕組みづくりを目指している。

深谷テラス内では、キユーピー株式会社が”野菜って楽しい!畑のわくわくと発見を食卓に”をコンセプトとした、畑、野菜レストラン、野菜ショップ、収穫体験や食育等の野菜教室からなる「深谷テラスFarm(仮称)」を開設する予定だ。

関東近郊から多くの人が訪れるアウトレットと同じ敷地に、野菜について知ってもらえる場を作ることで、深谷市の生産物を大々的にPRすることができる。市長が寄せる期待も大きい。

「市長に就任したとき、東京都内に深谷市の野菜のアンテナショップを持ちたいと考えていました。でも調べてみたら、アンテナショップの95%は赤字なんです。それを聞くと、担当は『PRを兼ねているから問題ない』と言ったけど、私はそれではダメだと思いました。しかし今度の花園ICプロジェクトには、都内にアンテナショップを持つのと同じくらいの効果があると期待しています」。

また生産者にとっては、直接生産物を販売する場となり、やりがいを感じるチャンスにもなり得る。

「自分の野菜が飛ぶように売れるのを見た生産者は、『もっとやろう!工夫しよう!』と思うはず。ただ生産してどこかに納めるだけではなく、自らの工夫が売り上げに繋がる姿まで見ることができれば、モチベーションもあがり、若い人達ももっと農業に参加するのではないでしょうか」。

可能性溢れる深谷を
もっともっと良くしたい

地域での6次産業化や、生産物PRの拡大だけでなく、消費者と距離が近いことを活かした取り組みも考えられる。

「例えば、消費者が直接畑に来て、買う野菜を採っていく。そんなことが出来るようになれば、直売所より一つ進んだ価値がつきます。深谷という土地だからこそ、色々な考え方ができると思います」。

今後、市は新電力会社を立ち上げ、電力を地産地消しようという計画を立てている。基本は公共電力への使用となるが、農業にも絡ませていきたいという。ICTを用いた土壌や安全性の検査を、深谷ねぎの更なるブランド化に適用していく考えなど、市長のアイデアは尽きない。

深谷市がつくりあげようとしているのは、「農業は面白い、新しいことに挑戦したい」と思える、深谷市の可能性を活かした環境なのだ。その裏に、どんな思いがあるのか。

「民間企業との提携など様々な取り組みを行っていますが、行政が支援できるのは、そういったチャンスづくりまでです。後は農家さんそれぞれに企業努力していただくしかありません。しかし、そこにこそ農業の面白さがあり、やりがいがあり、また新しいチャンスがあると思います。こうした循環をどんどん生み出すことが、市の農業振興や課題への解決に繋がると信じています。私は、深谷に良くなってもらいたいと本気で思っていますから」。


埼玉県深谷市長

小島進氏

埼玉県深谷市出身。2010年から現在まで、3期に亘って市長を務める。

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