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新規就農者が増える2大メソッド

4月1日から改正農協法が施行され、単協のなかにも女性理事を登用・増員する動きが増えている。婦人部では、料理教室や食育など子どもを巻き込んだイベント活動も多くなっているという。今回は新規就農者を増やすカギを紹介。

農業を産業化して
新規就農者を増やす

実は、日本の農業は、これまでも女性が支えてきました。現実には兼業農家が多く、昼間は夫が企業で働き、妻が1人で家事に加えて農地を守るという話はよくあります。このように女性の負担がある程度大きい上に、理事などに就任すると拘束時間も伸びる可能性があり、女性活用に関しては、時間的な部分も含め様々な環境面での配慮が必要だと思います。

若者の人材育成に関しては、現状あまりうまくいっていません。実家が農家の若者でも、関東近郊なら都市部に就職先がたくさんあるためそちらに行ってしまいます。外国人研修者に頼るケースも増えましたが、彼らは将来ずっと日本で耕作するわけではありません。

地域外から就農者を募るにしても、地元に土地を持っていない人が大半です。移住して農業をしたいという若者もいますが、彼らに共通する欲求は「定期的に休みがほしい」ということ。現在の農業スタイルではいつ休みかもわかりませんから、現状は就農を考えるにも高いハードルがあります。

この問題を解消するには、農業をきちんと産業化し、就農者がサラリーマン的に働ける就農スタイルの可能性も考えていくことが大事です。たとえばJAが農地信託をうけて農業法人を持ち、そこで若者を社員として雇う。そしてJAの営農指導員が教育するかたちも、農業の産業化への一つの道筋でしょう。

また、土地や知識を持たない人でも農家として独立できる環境づくりのカギとなるのが「教育」です。
JAでも中央会の教育部などで様々な研修を行っていますが、新規就農者向けのものはまだまだ少なく、あったとしても、農業技術はともかく、農業経営のノウハウに関するコースが非常に少ないことも気になるところです。政府などでは、新規就農者向けにバランスシートの作り方などの必要性を主張していますが、それはソフトウエアの導入で済むことです。

むしろ、農業教育の問題に関しては、大学レベルでも経営学がほとんど教えられておらず、農業に使えるITや経営学を教える場が、新規就農者だけでなく、既存の就農者にも必要になってきています。

これまでのJAのプログラムでは「戦技」として作物の栽培方法は学べましたが、次に必要なのは収穫量増加や品質維持のためのITの活用などのの「戦術」。そして、今の日本の農業教育に決定的に不足しているのは、ここから先の「戦略」で、どこにどう売るかということ。就農者が「戦略」を学べる環境が必要なのです。


杉浦宣彦氏 Nobuhiko Sugiura
中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授。金融法やIT法が専門分野だが、現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。


text: Kosuke Oneda

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