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農家の事業承継がうまくいかない理由、相続との違い

農家のこせがれネットワーク代表理事・宮治勇輔の連載「こせがれで変わるニッポンの農業」。第4回は「なぜ、農家の事業承継はうまくいかないのか?」。先代が元気なうちはつい先延ばしになってしまう「事業承継」に、逆転の発送で切り込む。

なぜ、農家の事業承継はうまくいかないのか?

僕は常々、「農業の後継者不足」より、「後継者がいるのに事業承継が円滑に進んでいないこと」のほうを問題視している。事業承継が進まないと、こせがれの成長を妨げる。最悪のケースは農業をやめて家を飛び出してしまう。このことは農業界にとって大きな損失だからこそ、農家のこせがれと親父さんには事業承継をしっかり理解してもらわないと、業界の発展はおぼつかない。

では、なぜ農家の事業承継はうまくいかないのか。
結論から言えば、相続と事業承継を一緒のものと考えているからだ。相続は先代が亡くなることで発生するので受け身にならざるを得ない。一方、事業承継とは先代が元気なうちに完了させるもの。考え方が全く逆なのだ。

このことを理解していないと、事業承継することなく相続まで待つことになるが、ワンマン社長が突然いなくなった会社は混乱の極みに陥る。

なぜ、こうなってしまうのか。
それはこせがれが「事業承継は先代の仕事」と思っているからだ。先代からすれば「息子は未熟者だし、自分はまだまだできる」と考える。すると、事業承継は先延ばしになる。だから、こせがれが積極的に働きかけないと事業承継は始まらない。事業承継の主役は次代を担うこせがれなのだ。

それから、意外に多いのは「うちは事業承継が完了している」と勘違いしているケース。「こせがれが戻ってきているから事業承継はできている」と思ってしまう先代は多い。このケースで承継できるのは農業技術くらいだろう。

さらに言えば、ただ引き継ぐだけでは足りない。先代の強みにこせがれの強みを掛け合わせ、新たなビジネスモデルをつくるまでが事業承継。先代のビジネスモデルで自分の代まで食べていけると思うのは甘い考えだ。

こせがれが動かなければ事業承継は前に進まない。「親父が自分の考えを理解してくれない」とあきらめず、積極的に経営に関与しよう。自分が変われば親父の態度も変わるはずだ。


宮治勇輔

神奈川県藤沢市在住。農家のこせがれネットワーク代表理事。実家の養豚業を継ぎ、2006年に株式会社みやじ豚を設立し代表取締役に就任。一次産業をかっこよくて・感動があって・稼げる3K産業にするべく活動中。


AGRI JOURNAL vol.04(2017年夏号)より転載

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