集え! 迷える農家の「こせがれ」たち
2016/09/15
家業を継ぐことだけが
ゴールではない
研究会の目的は3つ。こせがれにファミリービジネスへの誇りを持ってもらい、経営課題を解決する仲間とつなぐ。さらに、農業界最大の課題である「事業承継」のモデルケースをつくることだ。
宮治さんが考える事業承継のポイントは5つある。人、モノ、お金、情報、そして顧客の承継だ。研究会では、こうしたポイントを宮治さんがレクチャーしてくれるのだが、10年前に家業を継ぎ、まさにファミリービジネスを実践している宮治さんの経験談には説得力がある。
参加者は農家のこせがれのほか、農業以外の家業を持つこせがれや、まったく違うビジネスに従事している人もいる。農業関係者だけのネットワークは多くあるが、異業種の人が集って農家の事業承継について話せるのが研究会の魅力の1つだ。
「多くのこせがれが家業を継いでくれたら、という思いは正直ある」と宮治さん。だが、研究会の目的は必ずしもそこではない。
例えば最近の動きとして「こせがれ第2世代」が生まれていると宮治さんは見る。実家に戻って家業を継ぐのではなく、勤務先のリソースを活用して実家の農業を支える事例が出てきているのだ。企業としては優秀な人材を手放したくない。社会貢献の1つとして、農分野への支援に理解や関心を示す企業が出てきているのだという。
「いずれにしても、継ぐべきか否か迷い続けていると、自分の人生が生きられない。研究会での情報や人との出会いを、意思決定の参考にしてもらえたら」と願っている。
2015年10月の第1回を皮切りに、これまで11回の研究会を開いてきた。6回を1クールとしているが、途中からでも単発での参加も歓迎だという。ぜひ足を運んでほしい。
取材・文/小島和子