何者!? 日本の農業を盛り上げる「農援隊」
2016/11/21
若い就農希望者は増えている一方、雇用インフラは未整備で有望な人材を活かせていない。人づくりを通して農業の活性化に一石を投じる「農援隊」の戦略を探る。
人材育成と雇用創造を軸に
他業種をつなぐハブとなる
「人を活かす」をキーワードに人材ビジネスを手がける株式会社パソナグループは、農業分野の雇用創出をめざして、2003年から農業インターンプロジェクトを開始。2008年には兵庫県淡路島に自社農場「パソナチャレンジ
ファーム」を開設し、新規就農希望者の独立支援を行ってきた。そして2011年、農業分野における人材育成と雇用創出に特化した事業会社として設立されたのが株式会社パソナ農援隊。
多岐にわたる同社の事業の中でも中核をなすのが人材研修だ。本格的な就農希望者向けの研修を行う「パソナチャレンジファーム」では、3年間で栽培技術はもちろん、農業経営や地域の活性化なども学ぶプログラムを実施している。少量多品種の野菜作りを中心に、加工品の生産・販売、観光体験農園の運営などにも取り組んでいる。研修期間は農援隊の契約社員となり、給与も支払われる。独立資金を貯めるにも好都合だ。
一方、農業者など生産現場に対する支援・研修では、全国約40自治体と協業し、延べ9000名以上の農家に「農林漁業経営ビジネス経営塾」を展開してきた。就農希望者だけでなく、雇用側に受け入れ体制が整っていなければ、人材が育たず、農業の活性化が望めないためだ。パソナグループならではのネットワークを駆使し、600名にものぼる登録講師の中から、ビジネス経験豊富な人材を派遣。農業技術以外のノウハウや知見を提供してきた点が特徴的だ。
日本の農業が強くなるために何が必要だろうか。パソナ農援隊取締役の中川正樹氏は「もっと他産業や経済団との交流を深めるべき」と見ている。2009年の農地法改正を契機に多くの企業が農業に参入しているが、まだまだ効果的な協働が生まれていないというのだ。「弊社が他業種をつなぐハブになれれば」と中川氏は意欲を見せる。
パソナグループ広報室マネージャーの藤巻智志氏も、「今後農業をビジネスとしてとらえる感覚がさらに重要になってくる。生産物を売るだけでなく、付加価値をつけて利益を生み出す発想ができる人材を育成していきたい」と抱負を語る。人材事業のプロであるパソナグループの知見を活かして、人を軸として就農希望者と農業者、そして多様な事業者をつなぎ、自立した農業の未来を拓くことに期待したい。
Text:Kazuko Kojima
『SOLAR JOURNAL』 vol.15 より転載