【作業着とデザインのはなし】唯一無二の農園芸ウェア「ハーベスタ!ハビコル」とは?
2021/05/17
農業におけるファッションの意義とは? その答えの一端は、作業着メーカー「ハーベスタ!ハビコル」と、デザイナーを務める岡部文彦さんの言葉にあった。
美意識を磨き
モチベーションを上げるウェア
岩手県岩泉町で広葉樹林業を学びながら、作業着メーカー「ハーベスタ!ハビコル」を運営する岡部文彦さん。オンラインインタビューの当日、岡部さんは、印半纏(しるしばんてん)を着て画面上に現れた。
「僕が暮らす岩泉町は、昔ながらの暮らしが残っている町。この町に馴染む格好がしたくて、毎日羽織っています」と話す岡部さん。
同氏は、ファッションのメリットを知り尽くし、その醍醐味を享受する人だ。「見た目に気を配るってことも、自分の気分やヤル気を高める大事な行為だと思うんですよね。誰に会わなくとも、気に入った着心地の良い衣服を身に纏っているだけで、気持ちよく過ごせますし」。
幼少期の自然遊びから美的感覚を学んだという岡部さんの前職は、ファッションスタイリスト。メンズのファッション雑誌などで活躍するかたわら、型にとらわれないアウトドアウェアの着こなしも提案してきた、目利きのスタイリストだ。
そんな岡部さんが作業着メーカー「ハーベスタ!ハビコル」を本格始動させたのは、およそ10年前のこと。
「2009年に農園芸を楽しむ『バリカンズ』というチームを立ち上げ、チームウェアを作ったことが、『ハーベスタ!ハビコル』が始まるきっかけになりました。チームの活動は発展しなかったのですが、作業着を作ることは面白くて続きました。
農園芸の作業着専門メーカーは存在しなかったので、他には類を見ない作業着を作る意欲が湧きましたね。副業として、作業着開発にも力を注ぐようになりました」。
メーカーの主力アイテムは、乗馬パンツをモチーフにした「ボンデッジニッカパンツ」。特徴的なのはその形で、腰回りはゆったりとしているものの、膝から下の部分はキュッとすぼまっている。
「腰回りの空間に余裕があったとしても、ふくらはぎに装備したジップアップで固定されているので、しゃがんだり立ったりという動きがスムーズにできます。ちなみに乗馬パンツは、庭師の作業着としてよく知られているズボン。丈夫なワークウェアと機能的なアウトドアウェアをミックスして出来たのが『ボンデッジニッカパンツ』です」。
スタイリストならではのアイデアから生まれた作業着は、農業従事者からも支持されており、なかにはボロボロになるまで愛用する人もいるそう。
今後、リペアサービスの展開や農園芸用ヤッケなど新アイテムのリリースも控えている「ハーベスタ!ハビコル」。農業界でもじわじわと注目を集めるはずだ。
Pick up item
ボンデッジニッカパンツ
動きやすさや着心地も機能性であると考え、毎年改良を続けている定番のパンツ。パンクファッションをイメージした、ふくらはぎ部分に施されたジップアップを締めることで、腰回りの動きを快適にして、長靴などが履きやすくなるのが特徴。2021年モデルは色落ちしにくい日本製のデニムを使用してアップデートされた。
価格:20,900円(税込)
Harvesta!HABICOL(ハーベスタ!ハビコル)
● スタイリストならではのアイディアを反映
● ほかにはない、唯一無二のアイテム
機能的なアウトドアウェアと、実用的なワークウェアを融合した作業着を展開。サイドネームの「HABICOL(ハビコル)」には、草が「はびこる」ように、メーカーのアイテムが自然に広まってほしい、という岡部さんの願いが込められている。
文:緒方佳子
AGRI JOURNAL vol.19(2021年春号)より転載