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生産者の取組み

成功する農業後継「農業を家族に継がせたくない」

農家の事業後継……それは、既存の自社商品を "見直すきっかけ" でもある。経営危機に陥った北川鶏園は、先代が大切に守ってきた養鶏採卵事業を後継の息子が "見直し"、洋菓子店がこぞって購入する名の知れた鶏園となった。なぜ、北川鶏園の事業後継は成功したのだろうか? 農家の事業承継のヒントが、きっと見つかる。

「”この”たまごが良いんですよ」
有名洋菓子職人が指名で購入

まるでデパートのジュエリー売り場を覗いているような気分になる。千葉県で最も人気のあるこの洋菓子店では、今日もガラスのショーケースに、色とりどりのケーキが輝いている。

入り口のドアから、慣れた足取りでひとりの男が入ってきた。ショーケースに歩み寄ると、人柄の良さそうな目を線にして笑みをこぼした。彼の名は北川貴基(たかき)さん・43歳。この業界では名の知れた北川鶏園の代表取締役社長だ。

今では有名なパティシエからも「”この”たまごでなきゃ!」と、指名で注文が入るほどの北川鶏園だが、実は17年前には廃業しかけていた。

なぜ、北川鶏園は倒産を免れ、プロの職人たちがこぞって購入する人気鶏園になりえたのか? そこには、事業後継によって自社の強みを発見した後継の息子、そして「夢」を繋いできた先代の想いがあった。

農業を家族に
継がせたくない

千葉県袖ヶ浦市の「北川鶏園」社長 北川貴基さんは、大学卒業後まで、家業の養鶏採卵事業を継ぐことをあまり考えていなかった。先代の、現会長 富基(とみき)さんからも「実家を継いでほしい」と言われたことは一度もない。

学生時代、将来について悩んでいたときに聞こえてきたのは、「こんなつらい仕事は家族に継がせられない」「日本では農業を継続して行くのは難しい」という農家の先輩たちの言葉だった。

県内の大学の政治経済学部を卒業したものの、やりたい仕事の具体的なイメージは浮かんでこなかった。そんな中、貴基さんは軽い気持ちで「国際農業者交流協会」の米国研修に参加してみることに。期間は2年。この研修が後の自分の人生を変えるとも知らずに、貴基さんは100人の若者たちとともに米国へ渡った。

俺がスーパーバイザー!?
待ち受けていた壮絶な体験

日本人研修生2人とともに派遣されたのは、オレゴン州の洋ナシ農家。農場主に代わって収穫の指揮を執る「スーパーバイザー」の役目を任された。このとき現場にいたのは、収穫時期にだけ出稼ぎに来ているメキシコ人ワーカー30名で、皆ほとんど英語が話せない。

貴基さんも英語はそれほど得意ではないものの、一緒に派遣された2人よりも年が上で、トラクターに乗れることもあり、現場を仕切ることに。とはいえ本格的に農業に携わったこともないので「スーパーバイザー」の立場にいながら”もたもた”することが多かった。

「……痛い、痛い! 頼むからやめてくれ!」
要を得ない指示を出され、遅々として進まない作業に苛立ったワーカーたちは、”使えない”日本人バイザーに洋ナシを投げつけた。歩合制の報酬で雇われているメキシコ人ワーカーたちは、他人のせいで自分の収入が減ったらたまらないと、怒りをぶつけてきたのだ。

情けなかった。毎日が必死だった。
どうにかこうにかやり切って、振り返ったときに手元に残ったのは、自信だった。知らないうちに、日本にいた時とは比べ物にならないほど、打たれ強くなっていた。

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