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生産者の取り組み

成功する農業後継「農業を家族に継がせたくない」

農業は
儲かるのではないか?

洋ナシ農家のほかに、カリフォルニア州のポインセチアを育てる花き農家でも研修を行った。貴基さんが驚いたのは、どちらの農場主も、立派な邸宅に住み、豊かな生活をしていたこと。

「農業は儲からないと言われてきたけれど……本当は儲かるんじゃないか?」
貴基さんの目に彼らは、人間として大きく、偉大に映った。

この研修で貴基さんを大きく変えたものが、他にもある。それは、100人の研修生仲間との屈託のない語らいであった。

「俺は将来日本に戻って、農業で家族を幸せにするんだ」。
自分より年下の男が、そんな強い決意をもってこの研修に参加していることを知り、貴基さんの中で少しずつ、実家を継ごうという決意が固まっていった。

家業を手伝い始めるも、
まさかの経営危機

帰国し、貴基さんは家業を手伝い始めた。当時の販売先はというと、大半を卸会社へ販売し、近隣の飲食店やゴルフ場の売店に直接販売を少しだけ行っていた。

日本のたまごの流通はJA経由は少なく、そのほとんどが卸会社経由だ。餌の販売会社が運営する卸部門や、餌会社から紹介を受けた卸会社に販売するのが主流である。

鶏園に立ち始めて2年が経ったある日、当時社長だった先代の富基さんが、沈痛な面持ちでこう言った。「大口の取引先がなくなった。このままだと、うちの養鶏採卵は続けていけなくなる」

理解が追いつかぬまま呆然としていると、富基さんが続けた。「……営業に出てほしい」

営業の経験はまったく無かった。わけもわからず自分で名刺を印刷し、見積もりを作り、たまごのサンプルを片手に近隣の飲食店を走り回った。誰に営業のコツを教わるともなしに、ただひたすら店のドアを開け、静かに閉めて帰る日々だった。

それから1年ほどが経ったある日、それは突然にやってきた。
とある人との出会いが、北川鶏園の未来を変えることになる。

 

※次回は2018年2月2日に配信予定です。

 

話を聞いた人

有限会社北川鶏園 代表取締役社長

北川貴基さん

 

有限会社北川鶏園 取締役会長

北川富基さん

取材

「親子農業」研究員 ㈱ビジネス・ブレークスルー所属

乾祐哉

監修

親子農業指導教官 ㈱みやじ豚代表取締役

宮治勇輔

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