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生産者の取り組み

効果的な農福連携における業務委託のポイントとは?

<福祉事業者の視点1>
最大限の作業マッチングを考える

どんな作業を行うか、どんな作業方法で取り組むかは、利用者の特徴(障害特性)に配慮する。繊細さが求められる手先の作業か、体力勝負の除草作業かなど、作業に求められる項目と、個々の利用者の特徴とをマッチングさせるのである。

例えば、私の勤める就労支援施設では、ネギの出荷作業が中心となっている。ネギの葉先の枯れなどをハサミでカットする作業一つとっても、ネギの状態によって基準が日々変わってくる。

まず、反復練習を重ね基本的な動きをマスターし、時期によって出てくる病気などの場合にも指示に従って臨機応変に対応できるよう自信をつけていく。同じ作業を繰り返す中で、職員から成長している部分を具体的に伝える。そうやって少しずつ小さな成功経験を積んでいくことで、次への意欲につながっていく。

一度認識した基準を守り続けることは得意だが、基準に変更があった場合に混乱が生じる利用者もいるため、各々が存分に力を発揮できるよう、事前に委託先からの情報をできる限り引き出し、利用者一人ひとりに合わせた作業内容や方法を見つけ出していく。

<福祉事業者の視点2>
利用者が成長を実感できる、積み重ねの作業に!

社会では「自分の思い通りにいかないこと」とたくさん出会うことになる。農業は天候や季節によっての変動があるため、思い通りにいかないことを体感しやすい。思い通りにいかないことを言葉で説明するよりも、経験としてしっかり積み上げることができるため、社会へ出る(就職する)準備として農作業はうってつけである。

また、利用者が希望する作業と、職員が用意した作業内容は、必ずしも合致しない。納得がいかない日もあるだろう。だが、作業を重ねる中で、どれも必要なものであること、繰り返し行うことの重要性などを知り、やがて自らが作業の一員として機能していることを体感していく。そして、作業技術と内面が成長していることも実感していくのだ。

自分より成長段階が先にある利用者を手本とし、日々研鑽を重ねていくこともあるだろう。そうなってくれば、自然と一般就労の入り口が見えてくる。

まとめ

障がい者の方々が職員以外との接点があることで、一般社会に向けてのイメージを持ちやすくなる。個々の利用者は様々な事由により福祉事業所を利用しているが、将来を見据えた中で、常に社会と直接つながっている実感を持てる環境にあることは、喜ばしいことである。

私は業務のなかで、利用者を日々「観察」し、「話に耳を傾ける」ということ無しには、成長に向けたサポートは成立しないと思っている。これは業務受託においても同じで、クライアントである農業者の方々としっかり信頼関係をつくることが重要だと考える。

プロフィール

日髙 悠

2008年、日本社会事業大学福祉援助学科卒業。子どもたちの山村留学サポートや障がい児入所施設等での経験を経て、2016年NPO法人めぐみの里(障がい者就労継続支援施設)へ入社。自然のなかでの体験や企業連携を大切にしている。現在は、青ネギ出荷のチームリーダーとして、利用者一人ひとりに寄り添った支援を行っている。

HP:NPO法人めぐみの里

 

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