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生産者の取組み

業務改善ノウハウを公開中!マネしたい経営の合理化

クラウドファンディングで資金を集め、いよいよ「農家の知恵袋」を公開したことで話題となっている栃木県の阿部梨園。東京大学農学部・同大学大学院卒という異色の経歴を持つ農家の右腕・佐川さんが行った、経営効率化への約500もの改善策って?

どんぶり勘定から合理化へ
積み重ねた約500の改善策

国産梨のブランド化に成功した「阿部梨園」で、働き方改革が開始されたのは約4年前のことだ。きっかけは、三代目・阿部英生さんの片腕を担う、マネージャーの佐川友彦さんが入社したこと。

東京大学農学部・同大学大学院卒という異色の経歴を持つ佐川さんは、外資系企業などを経て、地域に根ざした活動がしたいと阿部梨園へ。経営効率化のための改善策を次々に提案していったという。

佐川さんが作成した、梨の木の配置図「圃場マップ」。マップをもとに木ごとにIDを与えて、作業の効率化を図った。

「一般企業と個人農家の、経営レベルのギャップを「伸びしろ」と捉えました。整理整頓からスタートし、現在まで大小含めて約500の改善策を実現してきました。ダメ出しをされる代表の阿部にとっては辛いこともあったはずですが、信頼して任せてくれたおかげでここまでに至りました」(佐川さん)。改善の柱の1つが、作業手順だ。

小規模・家族農業では抜け落ちがちな業務記録を義務化したことで、作業内容、病害虫の記録、生産量などを明確化。それを次期の計画に活かすことで作業フローの効率化を実現。おかげで無駄な時間を省くことができ、余剰の労力や時間が倍増。勤務時間や休日の融通も利くようになり、スタッフの士気も高まっていったという。

阿部梨園の梨は、なんと直売率99%以上。贈答用のオリジナル商品も、佐川さんがPRを工夫したことで販売比率が増えた。

「やっぱり農家の生産性は、『人』に尽きます。生産性の高い優秀なスタッフが継続して働きやすいような環境づくりが一番。実は作業の効率化よりも、労働環境や労働条件の改善が最も効果的でした」(佐川さん)。

佐川さんが旗を振る改善も、「現場の仲間をリスペクトし、生産者目線になって巻き込んでいくこと」で、従業員側から自発的な意見も出てくるように。従業員一丸となり、今後も改革が進められていく。

改善ノウハウを共有する
オンラインメディア誕生!

実際に阿部梨園が行った500件以上の小さな経営改善/業務改善から厳選した300件の改善ノウハウを公開し、同業の農業者が自由に利活用できるオンラインメディアが2018年5月7日に公開された。

資金調達と賛同者募集を目的にしたクラウドファンディングによって、320人以上から総額約450万円という多額の支援を得て達成されたプロジェクトだ。

プロジェクトの公約でもあった300件の記事は、サイトリリースと同時に100件の記事を公開し、残り200件は順次追加されるという。

阿部梨園の知恵袋


text: Yukiko Soda

AGRI JOURNAL vol.07より転載

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