加速する畑作物向けロボット開発! フランス・国際農業ロボットフォーラムから最新事例4選
2021/01/12
フランスで開催された、農業ロボット分野に特化した国際イベント「FIRA(国際農業ロボットフォーラム)」。畑作物向けロボットの先進事例を紹介するワークショップから、世界の最新ロボットを紹介しよう。
編集部おすすめ記事『世界中の英知が農業を面白くする。ベスト農業用フィールドロボットを発表!』
先進的な畑作物向けロボットが
次々と登場
スイスのエコロボティックス社は自律走行型除草ロボット「アヴォ」の実証実験の成果を報告。また、畑作物向けロボットの開発に取り組む有望なスタートアップ企業として以下3社が登壇した。
除草ロボット「ウィード・ワッカー」を開発するオッド・ボット社(オランダ)
農業用小型ロボットの研究開発に取り組むスモール・ロボット・カンパニー(イギリス)
農地用除石ロボット「ロックピッカー」を開発するテラ・クリア社(アメリカ)
ピンポイントで雑草を除去する
除草ロボット
圃場を自動走行しながら、カメラで検知した雑草を精緻に判別するエコロボティックス社が開発した自律走行型除草ロボット「アヴォ」。52個のノズルが付いた2メートルの噴霧器でピンポイントに除草剤を散布する仕組みだ。
エコロボティックス社の除草ロボット「アヴォ」©ecoRobotix Ltd.
上部に装着されたソーラーパネルと着脱式バッテリーにより稼働に必要な電力は太陽光発電でまかなわれ、昼夜問わず1日最大10ヘクタールの除草作業を自動化できる。
同社は、2020年9月にドイツ北西部ノルトハイムのテンサイ畑で「アヴォ」の実証実験を実施。「アヴォ」が除草作業を1回実行すると、71%の雑草が除去され、除草剤の散布量は従来に比べて78.4%軽減できた。また、スイス西部オルブの草原でスイバを除去する実証実験では、除草剤の散布量を従来に比べて89%軽減し、スイバの95%を除去した。
2021年以降、テンサイ、菜種、サヤインゲンなどの畑を対象に「アヴォ」の実用化をすすめていく。
除草剤不要
有機農場向け除草ロボット
「ウィード・ワッカー」は、オッド・ボット社が開発している除草ロボットだ。圃場を自律走行しながら、独自の画像認識アルゴリズムにより農作物と混在する雑草を判別。中心部に装着されているツールを下方に伸ばし、雑草を自動で引き抜く仕組み。
オッド・ボット社の除草ロボット「ウィード・ワッカー」©2018/2019 Odd.Bot B.V.
オランダ北部ナーゲレの有機農場で実証実験に成功するなど、これまでに8カ所で実証実験を行っている。除草剤を一切使用しないことから、有機農家をメインターゲットとして実用化をすすめる方針だ。
小型農業用ロボットの
定額制サービス
スモール・ロボット・カンパニーは2種のロボットを開発。ひとつは、1日最大20ヘクタールの圃場を自律走行しながら、農作物の生育状態や雑草分布など、圃場の様々なデータを高精度で収集する農業用小型ロボット「トム」。
もうひとつは、コンピュータビジョンにより雑草を自動で検知し、電流をあてて熱によって根まで枯死させる小型除草ロボット「ディック」だ。
これらのロボットは、圃場1ヘクタールごとに課金する定額制の農業用ロボットソリューションとして提供される見通しだ。
スモール・ロボット・カンパニーの農業用小型ロボット「トム」Copyright Small Robot Company 2020
スモール・ロボット・カンパニーの農業用小型ロボット「ディック]
Copyright Small Robot Company 2020
1時間に最大300個の石を拾う
除石ロボット
テラ・クリア社が開発する「ロックピッカー」は、土壌に負荷をかけずに石を拾う除石ロボットだ。圃場の石をカメラで検知し、人工知能(AI)によりその大きさや位置などを精緻に特定し石を拾っていく。
トラクターなど、既存の農業機械に取り付けて使用する仕組みで、10〜60センチの石を1時間に250〜300個除去できる。北米の1000エーカー(約404ヘクタール)以上の大規模農場をターゲットとして2021年には実用化する計画だ。
文:松岡由希子