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農業法人が「キャベツ搬送ロボット」を開発! その能力と実用化の可能性とは

埼玉県の農業生産法人が主導して『キャベツ搬送ロボット』を開発した、という驚きのニュースが流れた。そこでアグリジャーナルでは、開発担当メーカーにインタビュー。市販化や他品目への利用の可能性を聞いた。

ロボット農機の普及を
象徴するような一台


ロボット農機が広がりを見せている。日本国内で最初に市販されたロボット農機は2017年にクボタが発売した『アグリロボトラクタ』であるが、それが今では、田植え機やコンバインなど、製品のバラエティが充実してきた。これまで水稲作向け製品が多数を占めていたが、徐々に野菜作などで利用できる製品が増えてきていることにも、注目してほしい。茶園管理ロボットやアスパラガスの収穫ロボットなどが続々と市販されている。

そんな近年のロボット農機の普及を象徴するような一台が登場した。埼玉県深谷市の『DEEP VALLEY』構想のもと、同県の株式会社アトラックラボ、株式会社アームレスキュー、農業生産法人有限会社ファームヤードが「キャベツ搬送ロボット」を共同で開発したという。

この『DEEP VALLEY』構想とは、深谷市が推進しているプロジェクトのこと。アグリテック(農業×製造業・IT)関連企業の集積を図り、同市における農業課題の解決、農業生産性の向上、儲かる農業の実現を図ることを目的としている。



高機能かつシンプルな設計で
運搬時の課題を解決

一般的に、圃場で収穫されたキャベツは、人力台車やクローラー型エンジン台車を用いて、畑から運び出されている。これが重労働なのだ。キャベツの収穫箱は一箱10kg以上ある。この収穫箱を数十箱台車にのせて畑を移動させるのだが、人力台車では2~3人がかりで行うのが普通。エンジン台車では、細かな方向転換や速度調整のレバー操作が必要なので、誰もが簡単にできる作業ではない。また、エンジン台車は重量が重いので、移動が容易でないという点もデメリットであった。

そんな課題を解決すべく、開発された『キャベツ搬送ロボット』は、電動のインホイールモーターを4輪に採用し、200kgの積載重量を実現した、いわゆる電動台車だ。4輪駆動だから、エンジン台車で課題となっていた走破性を高めることに成功させている。

また、エンジン台車が抱えていたもう一つの課題、車両の軽量化を合わせて実現している。これに寄与したのが、シンプルであることを心掛けた製品開発である。実用化を強く意識していたため、低コストでの製品化を進めた。具体的には、複雑な制御を廃して、簡単に操作できるように、車体のジョイスティックか、シンプルな遠隔操作で行える仕様とした。積込作業をしながらの操作が容易であり、実用的であるという。制御系を複雑にしなかったから部品点数も抑えられ、車両の軽量化も実現させたのだ。

実用化の目処は?

実に魅力的な『キャベツ搬送ロボット』だが、こうした新規開発においては、社会実装が進まないケースが多い。本件では、実用化の目処は立っているのだろうか? 開発社であるアトラックラボの代表取締役、伊豆智幸さんにお話をうかがった。

「この『キャベツ搬送ロボット』は、2021年内の実用化を目指して開発しています。現在、制御系の改修段階にありますが、車体の方は実用になることは確認されていますし、一緒に開発した農業生産者(ファームヤード)さんからは、すでに導入したいとの声をすでにいただいています。実用性を高く評価していただきました。開発機をそのまま売ると100万円程度と高価ですが、これから開発を進めていく量産品では、価格を下げられる予定です」。

キャベツは重量が重いため、一般的な搬送車よりも強度を高める必要があり、フレームの補強を多く入れている。高強度と軽量化の両立に苦労した、とも語ってくれた。本機は畝間の調整を自由に行えるため、他の路地作物にも使用可能であり、既にネギ用も開発しているのだという。



 

問い合わせ

株式会社アトラックラボ


文:川島礼二郎

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