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「農機に人が乗らない時代」が幕を開ける! クボタが無人自動運転コンバインを発売

スマート農業を常にリードし続けてきたクボタが、遂に無人自動運転コンバインを市販する。これによりクボタの無人自動運転農機はトラクター&田植機と並んでフルラインナップ化が完成。人が乗らずに耕うん・田植・収穫できる時代が到来する!

コンバインを無人自動運転化して
軽労化・省人化と高精度化を実現

農業従事者数の減少と高齢化が同時進行する今、軽労化や省人化への期待は大きい。この軽労化と省力化を実現する最高峰の技術が無人自動運転である。この分野で最先端を行くのはクボタだ。2016年にGPS田植機を発売して市場ニーズを掘り起こすと、いち早くトラクターと田植機で無人自動運転を実現した。


そして2023年6月14日、クボタはプレス向け新製品発表会を開催して、世界初となる無人自動運転が可能なコンバイン『アグリロボコンバインDRH1200A-A』を公開。2024年1月の発売開始を発表した
クボタが最初に無人自動運転機を発売したのは、ユーザー数が圧倒的に多く、活用できる作業が多いトラクターだ。続いて発売された無人自動運転田植機は、省人化の効果が絶大だ。田植機を操縦するオペレーターが不要となることから、苗を補充する補助者1人で田植作業が可能となる。

今回発表された無人自動運転コンバイン『アグリロボコンバインDRH1200A-A』は、軽労化と、熟練者並みの高精度作業を実現するのがメリットである。クボタ作業機事業部長の谷和典さんは以下のように説明した。


「先行して無人自動運転機能を搭載したトラクターと田植機は、圃場に植物が生えていない状態で作業するので、人・障害物を検知しやすい。ところがコンバインが作業するのは収穫期。だから人・障害物が植物に覆われて隠れてしまう。この、人・障害物を検知する、という技術の開発が必須でした」と製品化にあたって克服した課題を解説した。



安全性の確保と高機能化が
実演で証明された

谷さんによると、「無人自動運転を実現しただけでなく、自動運転領域が拡大されたことと、熟練者並みの刈取技術を身に着けたことも特徴」だという。
『アグリロボコンバインDRH1200A-A』は、既発売モデル『アグリロボコンバインWRH1200A2』をベースに、無人自動運転化と高機能化を同時に実現すべく開発された。今回の発表会ではそれらのアップデートが実演で示されたので、順を追って説明していこう。


まずは無人自動運転時の人・障害物の検出。『アグリロボコンバインDRH1200A-A』が無人自動運転により小麦の収穫作業を行っている圃場内に、ダミー人形が設置されていた。ダミー人形の約5mほど手前であろうか、『アグリロボコンバインDRH1200A-A』がこれを人と検出して自動で停止した。ダミー人形を圃場から運び出し=安全な状態に戻して、リモコンを操作すると、何事もなかったかのように作業を再開した。


そのために新たに搭載したのは、『AIカメラ』と『車両検出用ミリ波レーダー』。AIカメラにより、人は検出するが鳥は検出しない、という判断が可能となった。このAIカメラを前後左右に4個搭載された。一方、コンバインの作業時は搬出用車両などが圃場内に入ることがあるが、このようなやや遠目の物体の検出に役立つのがミリ波レーダーだ。このミリ波レーダーは機体の前後に2個搭載された。これにより収穫対象と人・障害物とを識別して停止することが可能となり、2023年3月に農林水産省が定めたロボットコンバインの安全性確保ガイドラインにも適合した。

自動運転領域の拡大とは、作業開始時に人が乗車して行う最外周刈りが1周のみで済むようになったことを指す。これまで3~4周は必要だったから、1ha圃場で計算すると自動運転領域はこれまでの約70%から約90%へと大幅に拡大した。これを実現したのは、畦(あぜ)の高さを見ながらギリギリまで刈り旋回する、熟練者並みの技術だ。実演を行った圃場は畦が低かったが、刈り取り部を上げて旋回する様子は、まるで熟練者の運転のように無駄がなかった。これを可能にしたのはレーザーセンサーだ。RTK-GNSSアンテナとともに働き畦の高さと位置を検出する。

また、熟練者並の刈り取りとは、倒伏角度60度までの稲・麦の刈り取りに対応したことを指す。これにもレーザーセンサーが使われており、作物の高さを検知して、高さに合わせて刈取部やリールの高さ、それに車速を自動調整してくれる。この倒伏対応も実演で示された。写真は約5mほどの倒伏部(麦が倒されている)を刈っているが、倒伏部に入ると機体前方の刈取り部やリールの高さが低くなった。車速もややゆっくりになり見事に刈り取っていた。

クボタは『アグリロボコンバインDRH1200A-A』の販売は50台/年と見込んでいる。100馬力コンバインは年間500台規模だから、その1割を取ろうという算段。将来的には3割を無人自動運転機にしたい、と意気込む。自動車の自動運転が進むにつれて、将来的にはセンサー類の低価格化が起こる。そうなれば農業機械の無人自動運転機能が、より低価格で提供されるだろう。

「これで当社ラインナップに無人自動運転できるトラクター、田植機、コンバインが出揃ったわけですが、技術開発に終わりはありません。次はレベル3=遠隔操作・監視が控えています。公道走行時の安全性をどのように確保するのか、また通信技術との融合も欠かせません。課題は山積していますが、農業生産者の課題を一緒に解決していくのが当社の使命です。今後の開発に期待してください」(谷和典さん)。

2024年1月に『アグリロボコンバイン DRH1200A-A』を発売することで、クボタは無人自動運転機能を搭載したトラクター、田植機、コンバインをラインナップする。これで(ほぼ)人が乗らない農業機械で耕うん・田植・米麦の収穫が可能になる。新しい時代が、またクボタから始まる。



DATA

アグリロボコンバイン DRH1200A-A
2,203万7,400円~


取材・文/川島礼二郎

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