6次化で廃棄野菜を有効活用! 海外進出にも成功
2018/08/01
傷ものや大きさがまばらという理由で、野菜が大量に廃棄されているという課題がある、日本の農業。青森県の柏崎青果は、廃棄野菜をなくしたいという思いで農産加工を開始。農林水産省の6次産業化推進整備事業を利用して、海外展開にも成功したという事例をご紹介。
「捨てられる野菜に新たな命を」
廃棄野菜で6次化事業を開始
「不揃い野菜」「規格外野菜」と言い、傷ものや大きさがまばらという理由で廃棄され、市場まで出回らない野菜が沢山あるということが全国各地で課題となっている。
青森県の農業法人である柏崎青果は、主に、にんにく、ごぼう、長芋を栽培していた。同社が抱えていたのも、廃棄野菜の課題であった。
「当時は、丹精込めて作った野菜を、見た目が悪いからという理由で廃棄しなければならない現状に納得がいきませんでした」(柏崎氏)。
そこで同社は平成5年から、廃棄野菜だったにんにく、ごぼう、長芋の有効活用のため農産加工を開始。弘前大学の佐々木甚一医学博士と共同開発を行い、健康食品として付加価値をつけて売り出したのが、にんにくを熟成・乾燥した「おいらせ黒にんにく」だ。「第1回ものづくり新世紀青森元気企業顕彰」や「第16回あおぎん賞」など数々の賞を受賞。さらに規格外大根を加工した「切り干し大根」や規格外ごぼうを乾燥した「スライスごぼう」もロングヒット商品となっている。
健康意識が高い消費者をターゲットに
海外へと販路を広げる
加工事業が軌道に乗り、販売数が多くなったため、加工施設が不足することとなった。そこで同社は平成23年、農林水産省の6次産業化推進整備事業(※)を利用して設備を導入。設備拡大により生産数を増やし、売り上げ拡大につなげている。
※6次産業化の取組について、農林水産物の加工・販売施設や農林漁業用機械等の整備を支援する事業のこと。
そして柏崎青果は、更なる販路として海外へ目を向けた。平成26年、海外への販路開拓のためにJETRO(日本貿易振興機構)の農林水産物・食品分野出展海外見本市に参加。健康への意識が高い方向けに、「おいらせ黒にんにく」を積極的にPRした。ドライ、賞味期限1年と、輸出に最高の条件がそろっていた。健康的な食生活に対する意識が高い海外の市場では引き合いが多く、平成23年に60㎏だった海外への輸出量が現在は12500㎏になり、350倍にもなった。輸出先は北米アメリカ、欧州、アジア等、確実に販路を広げている。
廃棄野菜をなくしたいという思いで始めた、柏崎青果の加工事業。それでも野菜の加工場では、通常、野菜残渣の廃棄が大きな問題となっている。柏崎青果ではこの野菜残渣もゼロにすることを目指して、更に技術の向上や新商品の開発に取り組んでいるという。