美味しさだけでは売れない!? 差別化につながる「ブランド米戦略」とは
2019/03/22
差別化につながる
ブランド戦略が重要に
ここで、ちょっと違う視点で考えてみましょう。「クックパッドデータから読み解く食卓の科学」(商業界)という本があります。
ご存知、超人気レシピサイトであるクックパッドのデータを分析したものですが、たとえば
「平日は丼と炊き込みご飯が並び、休日はパンメニューが並ぶ。チャーハン、リゾットなどは短時間で作れ(中略)おにぎらずは行楽向き」
おひとりさまビギナーのごはんメニューは「リゾット、ドライカレー、バターチキンカレーといった、いわゆるカフェ飯と呼ばれるようなメニューが人気」
子育て世代は「牛丼、豚丼、カツ丼、三色丼のようなお肉が入ったボリューム感のある丼もの。ちょっとしたハレの日に重宝されているであろうちらし寿司、手巻き寿司、巻き寿司といった寿司類。また、おにぎり、おにぎらず、焼きおにぎりといった持ち運びができるものや、ピラフ、ビビンバ、おこわ、さつま芋ご飯、そばめしといったメニュー」
シニア世代は「旬の食材や、魚介類を使った米飯類」
……こういった分析データが紹介されており、ライフスタイルによって主食であるごはんメニューが違うことがわかります。つまり、お米を用途別、利用シーンを考えることも差別化につながるブランドになっていくのではないでしょうか。
また、健康志向の消費者に対しては、抗酸化作用や美肌効果があるポリフェノールが豊富な黒米や赤米、緑米といった古代米が注目されているほか、グルテンフリーの米粉パンや米粉パスタは今後海外展開も期待できます。
さらに、花粉症が予防できるお米(農業生物資源研究所)や、脳血管疾患や認知症予防が期待できる健康成分を多く含む発芽玄米(国立循環器センター)といった健康成分や機能があるお米の品種改良も進んでいます。
お米のいろいろな成分については、低GI、低脂質が脳細胞の成長を助けるとか、メタボリックシンドロームを予防して動脈硬化のリスクを減らすとか、米の油分に含まれる「γガンマーオリザノール」は糖尿病や肥満症の予防や改善に役立つほか、“おいしさや幸福感を感じる力”を高めるなど、科学的データも発表されています。
ところで、農研機構が平成9年に消費者の特徴ごとに米購入時の選択基準を調べた結果がありました。「所得の多い世帯の年配の女性」は品質(「色つや」「産地」「味の良さ」「ブランド」「歯ごたえ」)を、「一人暮らしの若者」はプレゼンテーション(「名前」「新奇性」「パッケージ」「評判」)を、「高齢者のいる家庭の主婦」「消費者グループに加入している主婦」は生活感(「手に入りやすさ」「栄養価」「安全性」「値段の安さ」と、 日常の便利さや食の安全・健康面など生活に密着した条件)を重視していたというデータです。調査年は少々古くはありますが、参考にしてもよいデータではないでしょうか。
text: Junko Ito
AGRI JOURNAL vol.10(2019年冬号)より転載