日本の6次産業が急成長!? 「サブファンド」という特効薬
2016/06/01
いま農業で最も旬なキーワードが6次産業化だ。農業をはじめ、林業、漁業の6次産業化による経済的成長を促すために発足されたA-FIVEのサブファンドが注目されている。
農林漁業含めて
69の6次産業事業を支援
2013年2月、農林漁業者の6次産業化の取り組みを支援する唯一の官民ファンドとして、「農林漁業成長産業化支援機構」(A-FIVE)が業務を開始した。
同社の出資スキームはこうだ。地域金融機関や農林漁業団体などが中心となって「サブファンド」(投資事業有限責任組合)という受け皿を作る。出資期間は最長15年間だ。同社はこのサブファンドへの間接出資が主となる。支援対象は、農林漁業者と他産業の6次産業化パートナー企業が連携して共同出資する「6次産業化事業体」となる。同社はこの事業体の経営支援や販路開拓なども手がける。
サブファンドは、今年9月18日現在までに全国各地で53件設立され、69の6次産業化事業体に対し出資を決定した。
「これまでの出資案件は、中食・外食の増加の影響で加工品需要が高まったため、産地で加工を行うカット野菜の製造や畜産物加工・外食等が多いです」(同社担当者)。
ほかに、畜産物を活用した外食展開、水産加工品の輸出、国産材の加工など、農林水産物を有効活用し、かつ地域の特性も十分に活かした多種多様な事業ばかりだ。
地産地消だけではなく
3000人の雇用創出も
出資枠はサブファンドベースで750億円あり、出資決定の実績は44.8億円あまり、うちA-FIVE出資分は半分の22・4億円となっている。
「出資額はまだ余裕がありますが、全国各地にほぼサブファンドができました。これまでが第1段階で、今後は第2段階へと入っていきます」。
投資回収が見込める7〜10年後には、これまで出資を行った事業体全体で各地域に3000人を超える雇用が創出される見込みだという。「政府が進める地域活性化と地方創生につながるものと考えています」。
同社は14〜16年度までの3年間を投資拡大期と位置づけている。株価上昇もあって日本経済は景気回復の兆しがあるが、農山漁村においてはそれを実感するまでには至っていない。
「地域に根ざした農林漁業者による実直な取組を、しっかり支援し、育てることで地域の雇用と活性化を実現するということが当社の使命です」。
今後も、各地でサブファンドと協力して案件を組成し、事業体の成長のスピードアップを図る。また、大規模案件を中心とした直接投資の実行など新たなステージに向けた取組を進め、さらなる農業の6次産業化・農村の地域活性化の推進に貢献していくという。
北海道[ひこま豚]
ひこま豚の飲食・精肉販売直営店を増強!
地域資源を生かした事業を展開
養豚の盛んな北海道・森町。同社は肥育日数180日以上の上質な雌豚を取扱い、加工・販売を行っている。サブファンドを活用し、飲食・精肉販売店にハム・ウィンナー用の加工機械を増設。それを足がかりに、高級飲食店や百貨店への販路開拓を進め、「ひこま豚」の認知度を高めている。
青森[あおもり海山]
絶品の深浦マグロを全国にPR!
供給力を高めるため加工センターも建設!
青森における漁獲量No.1を誇る深浦町。「深浦マグロ」ブランドを全国展開させるため、同社はサブファンドを利用してマグロ加工センターを建設する予定だ。マグロを熟成させるための保管庫や超低温冷凍庫などの設備を導入し、県の研究所と協力しながら、深浦マグロの加工食品開発していく。
山形[アグリゲート東北]
東北の果樹生産者が集い
新たなバリューチェーンを創出!
山形県のりんごやラ・フランス、さくらんぼなどの生産者が集まり設立された合弁企業。東北の果樹の付加価値を高めていくために、流通業者と生産者が一体になった新しい流通モデルを創り出していく。現在、海外での販路開拓、外食メニュー、加工品の開発を進めている。
埼玉[J-ACEひびき]
JA全農と焼き鳥店がタッグを組み
生産基盤を維持・拡大させる飲食事業
JA・6次化ファンドを活用し昨年に設立されたJA全農と外食店舗を運営する「ひびき」の合弁会社「J-ACEひびき」。飲食店の多店舗展開を通して、国産豚・鶏の販売力強化と生産基盤の維持・拡大を狙う。1号店となる「イーハトーヴォ料理 銀河浪漫」を東京の鍛冶町にオープンさせ。岩手県産の銘柄豚を中心に、岩手の郷土料理を提供している。
文/大根田康介
※『SOLAR JOURNAL』vol.15 より転載