【事例紹介】農福連携~企業・福祉施設・行政の取り組み
2018/04/10
『農福連携』は、その言葉の通り「農業」と「福祉」が連携して行われる取り組み。農業は地域条件・品目・栽培方法等により、経営スタイルは様々。福祉も同様に、障がい者・高齢者・生活困窮者・保育等、対象者や目的は様々だ。つまり、実践スタイルは数限りなく存在するのだ。企業・福祉施設・行政それぞれの事例を紹介しよう。
企業による
農福連携の取り組み
【事例①】京丸園株式会社(静岡県)
京丸園は、水耕プラントによるネギ、チンゲン菜、みつば等の周年出荷を中心に行っている。「働く個人ごとに役割を持て、人との繋がりの中で、幸せを感じられる仕事づくりを目指します」という事業理念のもと、24名の障がい者を含む89名(2017年10月時点)が働いている。
はじまりは、求人を出すたびに、特別支援学校や保護者の方々が会社を訪れ、「お給料はいりませんから」「実習だけでも」「親が付き添いますから」などの懇請を受けたことだった。鈴木社長は、当初まったく考えていなかったという障がい者雇用に踏み切ったという。
「農業は職人的な作業も多いし、本当に作業ができるだろうか」「既存のパート社員から反対されないだろうか」と、多くの不安を抱えながらスタートしたこの取り組みは、予想に反して多くの成果が得られたという。
京丸園・作業の様子
その1つとして、生産性が向上したことが挙げられる。「障がいを持つ職員がどうやったらスムーズに作業できるか」ということを考えながら仕事に取り組むことで、誰もが作業しやすい環境が作られていった。
また、職員たちそれぞれの特性を活かした作業配置を行うことで、より丁寧な作業へと変化した。その作業の1つが「虫取り」だ。ゆっくりと虫取りの機械を動かすことで効果が向上し、農薬使用量の削減にも繋がったという。農薬削減は経費を減らすとともに、より品質の高い商品づくりへの第一歩となった。
障がい者雇用による変化はそれだけではない。障がいを持つ職員が困っているとき、共に働くパート職員が積極的に声をかけたり、「どうやったら作業がしやすいか」を一緒に考えることで、職場の雰囲気がとてもよくなったのだ。
皆が協力しあい、支え合い、笑顔が生まれていく姿を見て、鈴木社長は本当に自分がやりたかった農業経営へ繋がっているとの確信を得た。以降、京丸園では毎年1人以上の障がい者雇用を行っており、「皆が幸せを感じられる仕事づくりを」と、進化を続けている。