“頑張らないストレッチ”が農作業にぴったり!? 筋トレマニアに聞く身体メンテ方法
2021/04/09
日々の農作業で体に凝りや痛みを感じることはないだろうか? 実はその違和感にストレッチが効果的かもしれない。今回、畑会代表の山田さんに、農家さんにおすすめのストレッチや体のメンテナンス法を教えてもらった。
農作業後の体は
カッチコチ!
1日の農作業後、体はどんな状態になっているのだろう。作業内容にもよるが多くの場合は長時間同じ姿勢が続き、全身の筋肉がこわばった状態にあると筋トレマニアでもある畑会(ハタカイ)代表・山田さんは指摘する。
「同じ姿勢が続くと血の巡りが悪くなり、凝りの原因になると考えられます。また同じ動作を繰り返すような作業をしたあと放置しておくと、関節の痛みの原因になる可能性もあります」
体がこわばった状態であるにも関わらず、農作業は日常的な習慣であることから、体のコンディションに無頓着の人も多いそうだ。「農家さんって基本的に毎日の作業で忙しいんですよね。体を使う仕事ではあるのですが、運動という観点でなく生産作業という側面が強いのも事実です」
とはいえど、毎日続ける仕事だからこそ元気で快適に続けていきたいもの。そこで大きな鍵を握るのがストレッチだ。
伸ばす=ストレッチではない。
2種類のストレッチ
ストレッチと聞いて思い出すのが、グーっと全身を伸ばすような動作ではないだろうか。「実はストレッチって、それだけじゃないんです」と山田さんが教えてくれたのは、静的ストレッチと動的ストレッチという2つの考え方だ。
静的ストレッチ(スタティックストレッチ)
静的ストレッチとは筋肉を伸ばした状態で反動をつけず、一定時間保持するような動作を指す。「一般的に思い浮かべるようなストレッチの多くは、静的ストレッチに当てはまるかもしれませんね。筋肉が温まっている状態で行うのは効果的ですが、こわばっている状態で行うと痛める原因にもなってしまいます。また可動域以上に引っ張り『痛い! 』と感じる状態を保持するのも、あまり良いとは言えません」
動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)
動的ストレッチは体を動かして筋肉に刺激を与えながら、可動域を広げて柔軟性を高めるストレッチを指す。リズミカルに低負荷で筋肉を刺激するため、心拍数や体温を上げることができ、運動前に適したストレッチとされている。
「ジャンプしたりさすったり揺らしたりして、運動神経に刺激を与えるのが動的ストレッチの考え方です。筋肉をゆるめることを目的としているので、適切に動作を行えば体を痛めるような可能性も低く、幅広い方に実践してもらいたい動きです」
筋肉ゆるゆるのポイントは
「がんばらない」こと
「よし、それならば気合を入れて動的ストレッチをしよう! 」と意気込む人もいるかもしれないが、山田さん曰く、頑張りすぎるのも良くないそうだ。
「『頑張ってストレッチをするぞ』という考え方ではなくて、出来る時や気付いた時に実践してあげるような考え方で大丈夫です。あくまでも凝り固まった筋肉をゆるめるイメージで実践してみてくださいね」
山田さんが実際に取り入れているのは、「さとう式リンパケア」考案者の佐藤青児さんの動的ストレッチだという。そのメソッドを参考に、農家さんが実践できるストレッチや考え方を紹介していこう。
作業開始時には
ラジオ体操がぴったり
1日の作業を始める前、筋肉は温まっていない状態だという。その状態でいきなり重いものを持ったり、可動域以上に伸ばしたりするような動作をすると、筋肉にダメージを与えてしまう可能性もある。全身の筋肉をゆっくり温めるという意味で、ここでも動的ストレッチが有効だ。
「作業前にはラジオ体操がぴったりなんですよ。リズミカルに筋肉へ刺激を与える動きがたくさんあり、効率よく全身を温めることができます。私も子供の頃は『こんな簡単な動きで?』と思っていましたが、実はとても効果的だと言われています」
他にもその日の作業に応じて、使う筋肉(部位)に手のひらを当て弱い力で揺らすという動きも取り入れてみよう。「筋肉やその周辺を優しく揺すってあげるのも、立派なストレッチです。揺らすことで筋肉が徐々にゆるみ、温まっていきます。揺する・さするなどの動きはOKですが、強く引っ張ることや揉むことはNG。強い力を加えることで、筋肉が強張ってしまうと考えられているのです」
部位別メンテナンス
背中のこわばり
重いコンテナをたくさん運んだり、同じ姿勢で細かい作業を続けたりすると、背中にこわばりを感じることも多いだろう。そのような時にも筋肉をゆるめる意識でストレッチを取り入れてみよう。
「例えば肩甲骨を意識して、腕を大きくゆっくりと回す動作は効果的だと言われています。また腕を脱力した状態で体の中心を軸にし、でんでんだいこのように上半身を大きく左右に振る動きも、効果的に背中の筋肉をゆるめてくれますよ」
腰のこわばり
農家さんのみならず多くの現代人が悩みを抱える腰痛でも筋肉をゆるめる動きは重要だが、ひとつ注意してほしいと山田さんは指摘した。「腰痛の原因は様々あり、それぞれ対処法が異なります。もし同姿勢からくる凝りのような痛みであれば、筋肉をゆるめる動きは有効だと言えるでしょう。もし痛みが長引いたり、違った痛み方を感じる場合には専門の医療機関で診察してもらいましょう」
凝りのような痛みだった場合は、こわばりを感じる筋肉に手を当て、痛みを周囲に拡散するようなイメージで優しく揺することで筋肉をゆるめられるという。
首のこわばり
長時間にわたって上を向いて作業するとき、首にこわばりを感じる人も多いだろう。今までであれば、グッと首の筋を伸ばしたり捻ったりしていたかもしれないが、その前に筋肉をゆるめる動きを実践してほしいという。
「他の部位と同様に、首のこわばりを感じる部位に手を当てて、揺らしたりさすったりしながら目をつぶって深呼吸を数回繰り返してください。それだけで少し楽になると思います」
ストレッチ時は
呼吸も意識してみよう
筋肉をゆるめる動きに重要なのが呼吸だという。山田さん曰く、深い呼吸をゆっくりと繰り返すことでリラックスでき、より効果的に筋肉をゆるめられるそうだ。
呼吸には主に4種類の方法があり、それぞれ胸式呼吸・腹式呼吸・胸腹式呼吸・横隔膜呼吸などが挙げられるが、今回はやりやすい方法でOK。自分の実践しやすいやり方でチャレンジしてみよう。
PROFILE
畑会・代表理事/畑オーガナイザー
山田正勝
2017年より東京都八王子で独自に「畑会」を起ち上げ、2018年3月より一般社団法人化。過去の経歴を活かし、畑会では農業体験や農業セミナーなどのイベント事業にメインで行い、食や運動、健康、音楽など活かした企画を担当。農業経営や農を基盤にしたコミュニティや地域経済についての持論を展開し、その考えを日々のブログやセミナーなどで発信している。
文:大城実結