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「農業のIT化」の隠れた問題とは? アグリテック推進でJAがすべきこと

次世代農家を中心にニーズが高まっている農業ICT。しかし実際、管理や出荷の効率化に向いているシステムは多いが、生産技術向上に役立つツールは少ない。農家が使いやすく、より良いアグリテックを生み出すために、JAはどう動くべきなのだろう。

アグリテックの推進は
まだまだ過渡期

最近、”強い農業・儲かる魅力ある農業”への転換のために、農業従事者の高齢化・担い手不足を、ICTの利活用で高効率・高収益の農業に転換させようという方向が政府の施策の中にも打ち出され、農業への様々な企業の参入も目立ってきている。また、JAグループでも6月のアグリサミットなどで、様々なアグリテックを進めていく方向性を表明している。

しかし、多くの現場を見ていると、違和感がないわけではない。そもそも農業に使えるIT機器は少なく、成功事例のように取り上げられているケースを見ると、一部の農業法人や一部の農家の生産や出荷管理の効率化の話だったりする。

また、生産現場に様々なセンサーを持ってきて「これさえあれば、田畑に温度や照度を測りにいかなくてもいいですよ」といって農地に様々な機器をつけるケースもあるが、結果は、農家の肌感覚や欲しいデータとはかなり違う代物が多い。現状の農業のIT化は、管理や出荷の効率化に重点が当てられ(これなら普通の工業生産の現場と同じではないか!)、新規参入組もまだ経験知が十分でなく、強い・儲かる農業にするための、また、生産技術の向上に寄与できるシステムづくりはまだまだ過渡期であるように見受けられる。


JAが地元農家の声を聞き、
要望に沿う技術開発を進めるべき

強い農業を目指すにしても、日本の農業は、地方を中心に農業人口の急速な減少と高齢化が進み、そう遠くない間に現状の農業を維持するための技術の継承ができなくなる危険を抱えている。AI(人工知能)をはじめとした様々なITの手法を取り込むにしても、まず、データの蓄積がないと役に立たない。ITリテラシーが高いとは言えない現状の日本農業の主力をなす年齢層から技術を吸収し、データ化して、ビックデータ化することは、急務ともいえる。

各JAはまず、若手を中心にITがわかる営農指導員を養成し、多くの農家からのヒヤリングを通じて、データ化を進め、現地で蓄積されてきた農業技術の継承とそれを活かす手法の開発を進めるべきだ。

DATA

中央大学大学院戦略経営研究科
(ビジネススクール)教授

杉浦宣彦さん

現在、福島などで、農業の6次産業化を進めるために金融機関や現地中小企業、さらにはJAとの連携などの可能性について調査、企業に対しての助言なども行っている。


AGRI JOURNAL vol.09(2018年秋号)より転載

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